変化し続ける音楽シーンという“荒野”に足を踏み入れ、新しい音楽を生み出そうとしている次世代のアーティストを紹介。第21回は姉妹によるピアノ連弾ユニット・Kitri
PHOTOGRAPHY: SHINTO TAKESHI
TEXT: ITAKO JUNICHIRO
DNA MUSIC
Kitriを生んだ美しい旋律を持つ30曲
クラシック、映画音楽、そしてポップミュージック。普遍的な魅力を放つメロディとそれぞれのアーティストが持つ唯一無二の個性が共存した30曲
INTERVIEW
ピアノという楽器には無限の可能性がある
1台のピアノを2人で一緒に弾く“連弾”というスタイルで今注目を集めているのが姉のMonaと妹のHinaからなるユニット・Kitriだ。幼い頃からピアノを習っていた2人はいかにして、現在のスタイルに辿り着いたのだろうか。
「4歳からピアノを習い始めたんですが、小学生の時に、様々な生徒が集まり順番に教えてもらう公開レッスンに参加する機会があって。そこで中学生ぐらいのお姉さんたちが連弾しているのを見て、すごく感動したんです」（Mona）
その後、Monaはより一層ピアノにのめり込み、音楽大学への進学を目指すようになった。一方、妹のHinaも姉の影響でピアノを始め、Monaが中学生、Hinaが小学生になった時に初めて2人で連弾をしたという。
「私はピアノもやりつつ、中学高校では合唱部に入って音楽を続けていました。そんなある日、母がパソコンのゴミ箱に捨ててあった、Monaが作った曲のデータを見つけたんです」（Hina）
「受験のためにピアノを引き続ける日々の中で、だんだんと息苦しさを感じるようになってきて……それで息抜きにこっそり曲を作ってみたんです。その曲のデータが母に見つかった時は、“勉強しなくちゃいけないのにごめんなさい”と泣きながら謝ったんですけど、母が“すごくいい曲だったよ。曲作りがしたいなら頑張ってみたら”と言ってくれて。その時にHinaと連弾した記憶が蘇り、姉妹でピアノとハーモニーを聴かせるユニットをやったら面白いんじゃないかと閃いたんです」（Mona）
そんな2人にとって大きな転機となったのが、大橋トリオとの出会いだった。元々両親が好きで、幼い頃から2人も憧れていた大橋トリオのスタッフにライブ会場で自主制作の音源を渡したところ、大橋も彼女たちの音楽に魅了され、自らプロデュースすることを買って出たという。
「大橋さんがあるライブのMCで私たちのことを紹介してくれたんですが、その時に“Kitriのような存在は他にいない。その唯一無二さが魅力”と言ってくれて」（Hina）
「誰もやっていないような音楽を作れたらいいなと漠然と思いながらKitriを始めたんですが、そのことを大橋さんに認めてもらえて、大きな自信を持つことができました」（Mona）
大橋トリオのプロデュースのもと、Kitriはメジャーデビューを果たし、これまでに『Primo』『Secondo』という2枚のEPを発表しているが、どの楽曲においても核となっているのは、やはりピアノ連弾と2人の歌声が織りなすハーモニーだ。ピアノと歌という生音に宿る奥深さや神秘性というものが童話的な歌詞世界を彩り、その一音一音が聴き手の心に沁み入ってくる。
「様々な楽器で構成されるオーケストラの音域を、ピアノはわずか1台で表現することができるんです。それからピアノは奏法としては鍵盤を叩くので打楽器ですが、弦が震えることで音になるので弦楽器でもある。そうしたことも含めて、ピアノという楽器には無限の可能性があると私は信じています」（Mona）
「それにピアノの音は誰もが小さい頃から耳にしていると思うんです。だからいつ聴いても懐かしさや親しみを感じることもできる」（Hina）
ピアノと歌を軸に自分たちにしか鳴らせない音楽を生み出すこと。結成当時に抱いた思いのままに、“Kitri”というひとつのジャンルを作ることができたらと2人は考えている。
「今は技術も発達して、様々な音をひとつの楽曲の中に取り入れることができる時代で、すごく情報量の多い音楽が溢れていると思うんです。そんな中でKitriはピアノの生音と2人の歌のハーモニーにこだわりたい。拙さや温かさなど人間にしか出すことのできないものを大切にして、どんな表現を生み出すことができるか。そこに挑戦していきたいと考えています」（Mona）
www.kitriofficial.com
Kitri Spotify オフィシャルアカウント
*こちらの記事は2019年8月20日発売の『SWITCH Vol.37 No.9 特集 LEVI’S®️ VINTAGE CLOTHING BEAT GOES ON 』でもお楽しみ頂けます
