戦争と平和 2022年忘れてはいけない物語が誕生した。

海の向こうで戦争があっても、日本で生きる多くの人は
本当の意味での戦争を遠くに感じています。悲惨な体験も知りません。

それは幸福なことかもしれない。

けれど、戦争を体験し、嘆き、悲しみ、
もう決して同じことを繰り返してはいけないという人びとの思いに支えられて
今日まで続いてきたことを忘れてはいけません。

戦後77年を迎え、その悲しみは風化しつつあるとともに、
わたしたちは再び同じ過ちを繰り返す方向へと歩みを進めつつあります。

もうだれも、家族や友人を失う悲しみに触れることがない世の中を作るため。

人が人の命を奪う世界を繰り返さないため。

池澤夏樹と黒田征太郎という、日本を代表する2人の作家が、
絵本を通して、広島市に残る被爆建物、旧広島陸軍被服支廠をテーマに
戦争と平和を伝えます。

絵本紹介

 

広島にある被爆建物の記憶を伝える忘れてはいけない物語。

主人公は一匹のネコと一本のクスノキ、舞台は広島陸軍被服支廠(ひふくししょう)というレンガの建物だ。太平洋戦争での広島市への原子爆弾投下の際、爆心地から2670メートルの距離にありながら、倒壊を奇跡的にまぬがれ、今も現存している。被爆後、この建物は臨時の救護所として活用され、多くの人を救い、被爆した多くの命を見送った。

「この建物は生きている」

広島、長崎をテーマに戦争と平和を問い続けるイラストレーターの黒田征太郎がこの建物に出会ったのは3年前のこと、まず建物の存在感に圧倒されたという。

「すぐには描けず、そっとレンガ壁に触れることしかできなかった」

しかし黒田は自分自身の戦争体験と重ね、月日をかけてこの建物を描いていった。後世に伝えるため、黒田は作家池澤夏樹に物語を書くことを願い、ともに被服支廠を訪れた。

「ぼくが行った時、被服支廠には枯れ草があった。それだけでも嬉しい。夏になればさまざまな花が咲き乱れ、緑も色濃いと聞いた。植物は救いである。何があっても少し時がたてば地面は植物に覆われる。人は結局はその力を借りて、これをお手本として生きているのだ」

池澤は希望の物語を作り、黒田征太郎に手渡した。   

絵本はここまでできるのか!
見るだけ読むだけでは済まない77年前の真実。
—— 谷川俊太郎

陸軍被服支廠とは?

陸軍被服支廠

広島陸軍被服支廠(ひろしまりくぐんひふくししょう)は、広島県広島市南区出汐にある旧大日本帝国陸軍の施設です。もともとは兵員の被服の製造や貯蔵、分配などを主な目的として1905年に開設されました。
太平洋戦争での広島市への原子爆弾投下の際、爆心地から2670メートルの距離にありながら、倒壊を奇跡的にまぬがれました。その結果、戦中は臨時の救護所、戦後は学生寮、運輸倉庫としても活用されました。
戦争や原爆の凄惨さを体現する貴重な建築として知られ、現存する4棟は広島市により「被爆建物」の一つとして認定されています。また、日本の鉄筋コンクリート造建物としては現存最古級という建築史的価値もあります。
1990年代後半からは完全な空き施設となり、耐震性の関係から取り壊し案も浮上しましたが、有志の市民らによる保存運動を受けて、現在では4棟すべてが保存されている見通しとなっています。

著者プロフィール

池澤夏樹ポートレート ©️Kana Ikezawa
©️Kana Ikezawa

池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年北海道帯広市生まれ。詩人、小説家、翻訳家。1988年『スティル・ライフ』で芥川賞、1992(平成4)年『母なる自然のおっぱい』で読売文学賞、2021年フランス芸術文化勲章「オフィシエ」など受賞多数。そのほかの代表作に『マシアス・ギリの失脚』『花を運ぶ妹』、『氷山の南』など。インタビューや寄稿、翻訳活動などを通じて、戦争や平和、原発問題など現代社会が抱えるさまざまな問題を一人ひとりが考えるきっかけを提供し続けている。

黒田征太郎ポートレート

黒田征太郎(くろだ せいたろう)
1939年大阪府大阪市生まれ。画家、イラストレーター。出生後、兵庫県西宮市に移る。1945年の神戸市空襲から帰還途中のB29の爆弾で自宅が被災し、滋賀に疎開。1961年に早川良雄デザイン事務所勤務を経て、1966年渡米。帰国後の1969年に親友の長友啓典とケイツー(K2)を設立する。ライブペインティングやホスピタルアートをライフワークとする。野坂昭如の『戦争童話集』 に絵をつける「忘れてはイケナイ物語り」プロジェクトや核兵器廃絶を訴える「ピカドンプロジェクト」など平和に関する活動も積極的に行う。

池澤夏樹メッセージ

 この本は日本中で読まれるでしょうが、広島の読者には特権があります。読み終わってすぐにも陸軍被服支廠に行ってみることができる。あるいは比治山に登れる。
 平和というのは消耗品です。製造を続けないとどんどん減っていくものです。そして今や陸軍被服支廠は軍服ではなく平和を作る工場になりました。ここに立って戦争のことや核兵器のことを具体的に想像し、今の世界を考え、心の中で平和を作ってみんなに配ってください。

『旅のネコと神社のクスノキ』

イベント

【展示】

8月1日〜8月7日 エディオン蔦屋家電(広島)

8月19日〜8月21日 門司港黒田征太郎アトリエ2階(福岡)

8月27日〜9月3日 Rainy Day Bookstore&Cafe(東京)

9月6日〜9月11日 神田ポート(東京)

【トークイベント】

[ 8月5日(金)]
19時〜 MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店
登壇:池澤夏樹+黒田征太郎


[ 8月6日(土)]
13時〜 エディオン蔦屋家電(広島)
登壇:池澤夏樹+黒田征太郎


[ 8月7日(日)]
13時〜  ママヒビハウス(広島)
16時30分〜 本屋UNLEARN(広島)
登壇:黒田征太郎


[ 8月11日(木)]
11時〜 北九州市立文学館(福岡)
登壇:黒田征太郎


[ 8月12日(金)]
旧八女郡役所(福岡)
13時30分〜 子ども食堂でのお絵描き会
19時〜  トークイベント
登壇:黒田征太郎


[ 8月20日(土)]
門司港黒田征太郎アトリエ2階(福岡)
15時〜 トークイベント
登壇:黒田征太郎


[ 8月26日(金)]
Rainy Day Bookstore&Cafe(東京)
19時〜 オンライントークイベント
登壇:池澤夏樹+黒田征太郎
*こちらのイベントは事前収録した動画の配信です
*配信期間:9月9日0時まで


[ 9月10日(土)]
神田ポート(東京)
13時30分〜 ワークショップ「あかいいろはどこからきたの」
*対象:3歳以上〜
17時〜  トークイベント
登壇:黒田征太郎、ただ、宮古美智代、新井敏記


[ 11月5日(土)]
ジュンク堂書店那覇店(沖縄)
14時〜 トークイベント
登壇:黒田征太郎

CONTE(沖縄)
17時〜 トークイベント
登壇:黒田征太郎
ゲスト:松永誠剛


[ 11月6日(日)]
プラザハウス(沖縄)
11時〜 ワークショップ
登壇:黒田征太郎
15時〜 トークイベント
登壇:黒田征太郎、池澤夏樹
トークイベントの配信はこちら

書誌情報

旅のネコと神社のクスノキカバー

旅のネコと神社のクスノキ

文 池澤夏樹 絵 黒田征太郎
木工制作 早川謙之輔 早川泰輔
写真 ただ
発売日:2022年8月1日(月)
判型:B5変
ページ:72P
価格:1,870円(本体1,700円+税10%)
*公式オンラインストアでは
特典ポストカード(2枚セット)付き

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絵本についてより詳しく知りたい方へ

Coyote No.77カバー

Coyote No.77
絵本の中の「せんそう」

絵本『旅のネコと神社のクスノキ』と連動をしながら、戦争と平和を絵本という視点から改めて考えます。絵本が生まれるきっかけとなった黒田征太郎からの手紙、木工作品を手がけた杣工房や陸軍被服支廠について、池澤夏樹×黒田征太郎対談などさまざまな視点から絵本に込められた思いを紐解きます。
発売日:2022年7月15日(金)
判型:B5変
ページ:144P
価格:1,320円(本体1,200円+税10%)

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