GO THE WILD SIDE OF MUSIC VOL.2 Nao Kawamura

GO THE WILD SIDE OF MUSIC VOL.2 Nao Kawamura
変化し続ける音楽シーンという“荒野”に足を踏み入れ、新しい音楽を生み出そうとしている次世代のアーティストを紹介。第2回は女性シンガー・Nao Kawamura

PHOTOGRAPHY: SHINTO TAKESHI
TEXT: ITAKO JUNICHIRO

 

DNA MUSIC
Nao Kawamuraの“シンガーとしての哲学”を育んだ30曲

クラシックからスウェディッシュ・ポップ、そしてビョークやエリカ・バドゥといった様々なカルチャーに精通した憧れの女性シンガーまで。Nao Kawamuraというシンガーの音楽性、生き様に影響を与えた多種多様な楽曲たち


 

INTERVIEW
私は常にオリジナルでいたい

ピアノの先生で音楽好きの母と文学好きの父の影響で幼い頃から何かを表現することが好きだったというシンガーソングライター、Nao Kawamura。現在、ジャズやR&Bをベースに多彩な楽曲を歌う彼女が本格的に音楽に没頭し始めたのは音楽大学に入学してからだった。
 
 
「大学に入るまで、私は何かひとつのことを地道にやり続けるという経験がまったくなかったんです。小さい頃から高校生ぐらいまでバイオリンを習っていたんですけど、これは自分がやらなくてもいいんじゃないか?と思って辞めてしまったし。じゃあ自分は何がしたいんだろうと考えた時に見つけたのが歌でした」
 
 
音大では授業そっちのけで図書館に籠もり、ひたすら様々なCDやDVDを漁り、自分が目指すべきシンガーの理想像を探し続けた。
 
 
「私の好きなビョークやエリカ・バドゥといった人たちは様々な音楽やカルチャーを自らの意志と向き合い吸収した上でオリジナリティを生み出していることに気づき、その姿勢や生き方は、歌をやろうと決めた時に抱いた、音楽を通して自分自身を表現したいという思いとも重なり、進むべき方向性が見えました。それからもうひとつ大きな転機になったのが、大学二年の時に受けたオーディションでの経験でした。そのオーディションで優秀賞をいただいてアメリカのジャズシンガー、サリナ・ジョーンズと一緒に歌う機会を得たんですが、その時に私自身歌が上手いということだけでは自分の世界を表現しきることはできないんだと痛感しました」
 
 
Nao Kawamuraが今年発表した『CUE』『RESCUE』を聴いて感じたのは、メロディ、歌声、バンドの演奏が寸分の狂いもなく合致することで、歌詞の意味や楽曲が描き出す風景が立ち上がってくることだった。
 
 
「例えばラジオで自分の曲がかかった時にリスナーに聴き流させないようにするにはどうしたらいいか。そのためには歌の上手さや強さはもちろんですが、演奏やメロディなどトータルでひとつの確固たる世界観を表現できていなくてはダメだと思っています。つまり、“Nao Kawamura”というブランドをどうやって打ち出していくかということが重要になってくる」
 
 
歌のスキルを磨き続けながら、いかにセルフプロデュースしていくか。Nao Kawamuraというシンガーはそのことにとても自覚的だ。
 
 
「海外の音楽を取り入れつつもそっちに寄り過ぎず、日本人ならではの感性も大事にし、その上で今の日本のシーンにはいないタイプの女性シンガーとしてのポジションを確立したいと思っています。誰々っぽいシンガーだよね、と言われるようなら自分がやっている意味がない。私は常にオリジナルでいたいんです」
 
 
誰にも媚びず、己の信念を貫き高みを目指す音楽的、精神的姿勢がSuchmosやWONKといった同世代が彼女の歌声に惹き付けられ、共に楽曲制作する理由なのかもしれない。
 
 
「私としては、すごく良い音楽だなと思って聴いていたら、作っているのがたまたま友達だった、という感覚なんです(笑)。団結して何かやってやろうぜ!という妙な熱量はあまりなく、それよりもそれぞれがやりたいことをやり続けた結果の個人の集合体というか。でも例えばアメリカのソウル・アクエリアンズや、日本だと70年代のティン・パン・アレイやユーミンたちのように、ひとつのムーブメントを作ることができたら素敵だなとは思っています。最近は音楽だけじゃなく、ファッションなど他のカルチャーの人たちとの繋がりも生まれてきているし、これからもっと面白いことになるんじゃないかな。そのためにも私はまず女性シンガーとしてもっと有名になりたい」
 
 
そう話すNao Kawamuraの目には彼女の歌声同様、強い意志が宿っていた。

 

GO THE WILD SIDE OF MUSIC VOL.2 Nao Kawamura
Nao Kawamura 1992年生まれ。シンガーソングライター。洗足学園音楽大学卒。昨年フジロック“ROOKIE A GO GO”、今年サマーソニックに出演。EP『CUE』『RESCUE』で注目を集め、現在は来年に向け新プロジェクトが進行中
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