STYLE in ACTION by Salomon Sportstyle vol.3 長谷川大祐

日々の選択や習慣が、個々のスタイルを形づくる。自由な思考や行動を支えるSalomon Sportstyleは、さまざまなジャンルで活躍するクリエイターにとってどのような存在なのか。彼らの価値観やクリエイティブの背景を通して、その魅力に迫る連載企画。

PHOTOGRAPHY: MIURA DAIKI   TEXT: IKEDA MASATO

疑いから始まる視点

学生時代、映画や音楽に没頭した経験が、映像監督/アートディレクター/アーティスト・長谷川大祐の原点にある。美術大学で映像や写真を学び、大学院ではメディアアートへと領域を広げながら、現在の表現に繋がる視点を獲得していった。

「高校の頃に映画や音楽にのめり込んで、そこから映像へと関心が移っていきました。最初はミュージックビデオなどに興味を持っていたんですが、美大では現代美術や演劇のような、かなりアカデミックなところから始まって。でも結果的にはそれが良い経験になったと思っています。あらゆるものをできる限り多角的に捉えること。そして、目の前にあるものを疑うこと。大学と大学院で学んだそうした感覚は、今でも自分の中に生きています。
その後はデジタルブランディング会社で働いて、独立しました。キャリアの出発点はVFXやエフェクトなどの仕上げの領域で、大学院で取り組んでいたソフトウェアの改造やプログラミングの延長にある仕事でした。そこから徐々に、自分の視点そのものを面白いと言ってもらえることが増えて、企画や監督といった上流の工程にも関わるようになっていきました」

転機となったのは、とあるブランドのプロジェクトでロンドンを拠点に活動するデザインスタジオ「OK-RM」の2人(オリバー・ナイト、ローリー・マクグラス)とプロモーション/パフォーマンス映像を制作したことだった。

「当時は本当に仕事がなくて、廃業も考えていた時期だったんです。失うものは何もないという思いでDMを送ってみたら、明日話そうと返信がきて。自分のやっていることを面白がってくれて、一緒にプロジェクトをすることになりました。
制作の中で印象に残っているのは、彼らがほとんどディレクションをしないことです。ムードボードも明確なものはなくて、すごく抽象的なイメージを共有するだけ。ただ、違うものは違うとはっきりしている。制作中は毎日が手探りで、答えのない海を泳いでいるような感覚だったんですが、彼らとの仕事の中でコラボレーターのポテンシャルを信じて、それを引き出す方法を学びました。自由な提案をし合いながら、OK-RMの二人は僕との関係性そのものをデザインしていたんだな、と。その経験は、今の自分の制作スタイルにもかなり影響しています」

プロダクト起点の思考

昨年はスニーカーコンベンション「atmoscon」や「XT-WHISPER VOID」 のローンチイベントでクリエイティブディレクターを務めるなど、継続的にサロモンとの取り組みを行っている長谷川。ブランドとの出会いは学生時代まで遡る。

「サロモンの存在を知ったのは、僕が大学生くらいの時ですね。ちょうどパリのセレクトショップ・THE BROKEN ARMがサロモンを取り上げてファッションとして浸透してきたタイミングで。最初は単純にユーザーとしてブランドのことを認識していて、その後独立してから神南にある“吾亦紅”というセレクトショップで開催されたポップアップに合わせて映像を作ったのが最初の関わりでした。そのポップアップは、サロモンのあまり知られていない商材も紹介するアーカイブイベントだったので、倉庫に眠っていた商品が逃げ出して街を歩き回る、という映像にしたんです。結構馬鹿げているんですけど、ブランドの担当の方に気に入ってもらえたことを覚えています」

作品の起点になるのはアイデアではなく、対象そのものにあるという。映像制作のアプローチ方法について訊くと、長谷川はこう続ける。

「特に広告を作るときは、どんなに面白い映像でも商材の魅力が伝わらないと意味がないと思っているので、まずはとにかく撮影に関連するものと向き合います。シューズであれば実際に履いて、特徴や歴史、文脈などをノートに書き出して、一度自分の中の体験として落とし込む。本質的な解がどこにあるのかを探りながら、良さが一番伝わる表現方法を考えています。その対象が人になっても音楽になっても、基本的なアプローチは変わりません」

そうしたプロセスを重ねる中で、サロモンというブランドへの理解も徐々に深くなっていった。

「一番の魅力は機能美だと思います。素材や構造がちゃんと機能に基づいていて、それがそのままデザインとして落とし込まれている。僕がシューズに求めるのは、身体をどれだけスムーズに動かしてくれるか、という点なんです。サロモンのシューズは本当にストレスを感じないので、撮影現場や海外にもよく履いていきますね。同時に、かなり変態的なブランドだとも思います(笑)。配色やデザインに関してもそうですが、何より制作においてここまで自由にさせてくれるブランドはなかなかないんです。作り手の思いを最大限尊重してくれる思想が、プロダクトにも滲み出てるなと感じます」

執念がかたちにするもの

今回彼が着用したジャパンエクスクルーシブコレクション「NAMI PACK」は、「ACS PRO」、「XT-6 GTX」、「XT-4」 の3型から構成される。日本の自然や都市景観、葛飾北斎の“波”を着想源としたデザインテーマについて話すと、長谷川は自身の映像観に重ねて語った。

「映像もどこか波に近い性質を持っていると思います。曲線的な流れという意味でもそうですし、起承転結のような構造も一種の波と捉えられますよね。その波は作り手によって形が変化する上に、受け取る側によって解釈も変わる。始まりと終わりを持つ流れの中で、観る人が自分なりに解釈して、またその前後で波のような新たな物語が連鎖していく。そうした広がりが映像の面白さだと感じています」

作品の捉え方やものづくりの姿勢の中に、思考の輪郭が見えてくる。最後に、その根底にあるクリエイティブへの考え方について訊ねた。

「一言で表すと“執念”です。狂気的な執念。純粋にものづくりが楽しいという感覚はありながらも、昔から反骨精神やアンチ精神は常に抱えていて、それが自分の原動力になっていると思います。自分の中のネガティブな感情やそこから生まれるエネルギーで、いろんな人の思い込みや当たり前を壊していきたい。それが結果として誰かにとっての前向きなきっかけになってほしいですね。少し壮大に聞こえてしまうかもしれませんが、生きている以上社会との接続は避けられないと思っているので、その前提に立ちながら、少しでも社会が良い方向に作用する作品を作り続けていきたいです」

長谷川大祐 1998年生まれ。映像監督/アートディレクター/アーティスト。広告・音楽・パフォーマンスを横断して活動する。東京TDC賞2024〈映像部門〉入選、Berlin Music Video Awards Silver Screenings Selection 2025選出など。

NAMI PACK
5/15から国内流通限定で展開されるジャパンエクスクルーシブコレクション。日本の自然や都市景観を着想源に、アッパーやソールに“波”のデザインが落とし込まれている。発売モデルは、「ACS PRO」、「XT-6 GTX」、「XT-4」の3型。「ACS PRO」の発売を皮切りに隔週連続でNAMIモデルが発売される。お求めは、サロモン公式オンラインストア及び取扱店にて。
https://salomon.jp/