RADIO SWITCH特別版 元春レイディオ・ショー「パンデミックの夜を穏やかに過ごす」

 

5月9日、シンガーソングライター・佐野元春がDJを務める「元春レイディオ・ショー」が「RADIO SWITCH」で一夜限りの復活を果たしました。テーマは“パンデミックの夜を穏やかに過ごす”。ここでは佐野元春による11曲の選曲リストをご紹介します。選曲された曲のタイトルや歌詞に込められた、佐野元春から今を生きる私たちへのメッセージ。ぜひお楽しみください。

 

また、5月20日発売の「SWITCH 特集 うたのことば」には佐野元春のロングインタビューが掲載されます。あわせてお楽しみください。

 

*この記事は5月9日24時から放送された「RADIO SWITCH」の内容を再編集し書き起こしたものです。

 

SONG 01. DON’T YOU WORRY ‘BOUT A THING / STEVIE WONDER

こんばんは、佐野元春です。「RADIO SWITCH」の編集長・新井敏記さんから「番組をやってみませんか?」とお誘いいただきました。嬉しいですね。マイクロフォンの前に座るのは久しぶり、ちょっと緊張しています。「RADIO SWITCH特別編 元春レイディオ・ショー」、今夜のテーマは“パンデミックの夜を穏やかに過ごす”。不安な毎日が続いていますけれども、私たちの心に寄り添ってくれる音楽、そしてソングライターたちの声ですね、そこに耳を傾けてみたいと思います。DJ佐野元春でお送りします。1曲目はスティーヴィー・ワンダーの名曲。「とにかく心配するなよ」。そんな風に歌っています。

 

SONG 02. I CAN SEE CLEARLY NOW / JIMMY CLIFF

ジミー・クリフ、70年代の名曲。ジョニー・ナッシュのヒット曲をカバーしています。“It’s gonna be a bright”、「そうさみんなこれからは明るくなるんだ」。そんな風に歌っています。

 

SONG 03. EVRYDAY IS A WINDING ROAD / SHERYL CROW

アメリカのシンガーソングライター、シェリル・クロウ、90年代のヒットレコード。「毎日は曲がりくねった道のよう、良い時もあれば悪い時もある」。そんな風に歌っています。

 

SONG 04. LEAN ON ME / BILL WITHERS

SONG 05. DON’T IT MAKE IT BETTER / BILL WITHERS

SONG 06. LOVELY DAY / BILL WITHERS

残念なニュースがありました。今年の4月、ソウルミュージックのレジェンド、ビル・ウィザースが亡くなりました。70年代に活躍したアーティストです。「Lean On Me」「Lovely Day」「Ain’t No Sunshine」……本当に多くの名曲を残しました。アメリカはウエストバージニア州出身のシンガーソングライターで、グラミー賞を3回受賞しています。話によるとブッカー・T・ジョーンズが彼のデモテープを聴き気に入ったことがきっかけでデビューしたとのことです。1971年リリースのデビューアルバムは『Just as I Am』。 ブッカー・T・ジョーンズのプロデュースということで、彼のバンド、ザ・MG’sのメンバーがバックアップしています。ドナルド・ダック・ダン、アル・ジャクソン、そしてギターにはこの時、スティーブン・スティルスが参加しています。このデビューアルバムがヒットして注目されました。その後順調にツアー、そしてレコーディングと続けていたんですが、残念ながら80年代に入ってから引退をしています。そして今年の4月、彼が亡くなったというニュースが入りました。ソーシャルメディアでも追悼のコメントがたくさん出ていました。ザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン、レニー・クラヴィッツ、ポール・マッカートニーほか、本当に多くのミュージシャンたちが悲しみのツイートをしていました。それだけリスペクトされていたということだと思います。ではここでビル・ウィザースの曲を3曲。くじけそうな時は僕のことを頼ってくれ。そんなふうに歌う「Lean On Me」、続いて「Don’t It Make It Better」、そして「Lovely Day」。

 

SONG 07. SOUL DEEP / TAHITI 80

SONG 08. MUSIC IS POWER / RICHARD ASHCROFT

SONG 09. PATIENCE / TAME IMPALA

先日、誰かが書いたコラムにこんなタイトルを見つけました。「世界の都市の大気汚染、ロックダウンで異例の改善」。その記事によると世界の主要都市でかつてないほど大気がきれいになったとのこと。それはそうですよね。世界中、飛行機も工場もみんなお休みしている。大気が元に戻って、まるで地球が息を吹き返したかのような、そんなイメージだろうと思います。僕はこの記事を読んだ時、ものごとっていうのは悪いことの反面、良いことも同時に起こっているんだなと、そう思いました。どうしても暗くなりがちな毎日ですが、見方によってはちょっと嬉しいことがある。そんな感じでしょうか。ただ事態が収束した後どうなるんだというと、正直ちょっと心配ですよね。また元に戻ってしまうのかもしれません。ですので、僕は今この瞬間、地球がまさに一瞬ではあるけれども息を吹き返しているという、これは言ってみれば一つの経験であり、この貴重な経験を一生忘れないようにしておこう。そんなふうに思っています。みなさんはどう思いますか?

 

SONG 10. エンタテイメント!/ 佐野元春 & ザ・コヨーテバンド

自分のことになるのですけど、今一緒にやっているバンド「ザ・コヨーテバンド」が今年で結成15年目を迎えました。この前のバンドがThe Hobo King Band。そしてその前のバンドがTHE HEARTLANDというバンドでした。前のバンドもそれぞれ15年やりましたから、いよいよこれでコヨーテバンドも歴代のバンドと肩を並べたなという感じです。メンバーを紹介します。ドラムス・小松シゲル、ベース・高桑圭、ギター・深沼元昭と藤田顕、そしてキーボード・渡辺シュンスケ。彼らとはライブにレコードに、活動をずっと一緒にやってきました。本当にみんな仲がいいですね。それぞれのミュージシャンがお互いにリスペクトし合っているという、それがバンドを長くやっていくにあたって一番大事なことなのかなって思います。

 

そんな佐野元春 & ザ・コヨーテバンド、結成15周年を記念してベストアルバムが出ます。タイトルは『THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005–2020』。2枚組になっていて、全部で34曲収録しています。ただ曲を集めただけじゃなくてミックスが違うバージョンとか編集したバージョンとか、新しく聴いてもらう曲も何曲かあります。80年代から僕の音楽を聴いてくれている人たちだけではなく、最近聴いて気に入ってくれたという新しいファンの人たちまで、みんなに楽しんでもらえるベストアルバムだと思うので、ぜひパッケージを手にして聴いてみてください。ではここで、そのベストアルバムにも収録する僕らの新曲を紹介させてください。こういう時なので本当にエンタテイメントというものは大事だなと思っている方もいると思います。今新たな危機を迎えているエンタテイメント。どうにかこの試練を乗り越えて復活してほしいなと思っています。

 

SONG 11. CHANCE FOR US / TODD RUNDGREN

ボーカルにダリル・ホールとボビー・スティックランドをフィーチャーした、トッド・ラングレンの「CHANCE FOR US」。僕らにもチャンスはあるよね。そんな風に歌っています。

 

世の中にはいろいろなエンタテイメントがありますけれども、やはりラジオは特別ですね。今、音楽の聴き方、楽しみ方というのは本当にさまざまだと思います。Apple MusicとかSpotify、そのほかいろいろな配信サービスも出てきています。でもやっぱり、僕はラジオの魅力というものはかけがえのないものだと思っています。全国のDJのみなさん、ぜひこれからも僕らに素敵な音楽をいっぱい届けてください。よろしくお願いします。

 

元春レイディオ・ショー“パンデミックの夜を穏やかに過ごす”、そんなテーマで進めてきました。いかがでしたか。「RADIO SWITCH」の編集長・新井敏記さん、そして彼が立ち上げたマガジンの「SWITCH」。今年で創刊35周年目ということ、おめでとうございます。ひとつの雑誌がこれだけ長続きするというのは本当に大変なことです。心からお祝いしたいと思います。今回は「RADIO SWITCH」の枠を借りて、一夜限りの「元春レイディオ・ショー」、久しぶりのDJ、とても楽しくできました。番組スタッフのみなさん、そしてリスナーのみなさん、お付き合いをどうもありがとう。今回に限らず、また声がかかるのを待っています。ぜひまた呼んでください。DJ佐野元春、ではまたいずれ!

 

SWITCH Vol.38 No.6
特集 うたのことば

2020年5月20日発売
価格:1,000円+税