日々の選択や習慣が、個々のスタイルを形づくる。自由な思考や行動を支えるSalomon Sportstyleは、さまざまなジャンルで活躍するクリエイターにとってどのような存在なのか。彼らの価値観やクリエイティブの背景を通して、その魅力に迫る連載企画。

PHOTOGRAPHY: MIURA DAIKI TEXT: IKEDA MASATO
「盗む」という体験装置
Dos Monosのラッパー兼クリエイティブディレクターのTaiTanとMONO NO AWAREのフロントマン玉置周啓がパーソナリティを務めるTBSラジオ『脳盗』発の体験型イベント「盗-TOH-」。“音を立てなければ全商品を盗める”という大胆なコンセプトは国内外で高い注目を集め、今年で三回目の開催を迎えた。
「もともとTCS(TOKYO CREATIVE SALON)というプロジェクトの一環でトークイベントの依頼を受けたのですが、あまりカッコいい企画になるイメージを持てなくて。それなら全く別のことをやろうと、体験型イベントを逆提案したのが始まりでした。僕らは『脳盗』とは別に『奇奇怪怪』というポッドキャスト番組もやっていて、これまではそうした番組のリスナーや僕達を知ってくれている人に向けて企画を発信してきたのですが、この『盗』はもっと開かれた形で、あらゆる人との接点を持ちうる装置のようなものを目指そうと考えました」
これまで屋台や祭りなど、日本のクラシックなモチーフをアートワークに落とし込んできた「盗」。今年はその舞台を“コンビニ”へと移した。
「コンビニは最も身近な小売店でありながら、日本独自のカルチャーが凝縮されている場所でもあると思うんです。アニメや漫画とのコラボ商品が並んでいたり、訪日客にとってはコンビニで買い物をすること自体がクールな体験になっていたり。しかも日本中どこに行っても同じクオリティが担保されていて、それ自体が一種の観光資源にもなっている。そう考えると、コンビニこそが日本の培ってきたIPそのものなんじゃないかなと」
開催三年目を迎えて見えてきたのは、全く異なる属性を持つ人々が同じ空間で同じ体験を共有するという、新しい“場”としての可能性だった。
「ラジオやポッドキャストだけやっていたら絶対に交わらない人たちが、この瞬間だけはお互いをいがみ合うことも、牽制し合うこともなく楽しんでいるというのは、企画段階から理想としていた状態ではありますね。海外のお客さんも増えてきている中で、日本のカルチャーはまだ断片的にしか伝わっていないとも感じていて。より立体的に提示していく方法として、コンビニというフォーマットには十分に可能性があると思っています。五月にはA24の新作映画とのコラボイベントも控えていますし、これからコンビニや盗を舞台にさらに大きな仕掛けを狙っていきたいですね」


境界のないスタイル
今年1月にニューアルバム『Dos Moons(Full Moons)』をリリースし、8月にはキャリア最大規模のワンマンライブを予定しているDos Monos。ラッパーとしても活動するTaiTanにとって、ファッションはあくまで生活の延長にあるものだという。
「僕は仕事も日常生活もかなりシームレスに考えていて、例えばラップも無理に言葉を絞り出すというより、自分が面白く生きている状態がそのままリリックに反映されればいいと思っているんです。極端に言えば、マイクを渡されて喋る場所がステージの上か、ラジオブースかの違いでしかない。だからオンもオフも、表も裏もなくて、とにかく全てが繋がっているという感覚がありますね。洋服の選び方に関しても、見た目の好みはあるにせよ、自分の生活やスタイルに馴染むかどうかが一番大切。僕は生きてるだけで満額査定人間なので、自分が自分でいられる状態を第一優先に考えています」
サロモンを着用するようになった背景には、機能性と快適さを重視したライフスタイルの変化があった。
「クリエイティブディレクターとしての仕事が忙しくなってきた頃に、“モノを持たない生活”というのを実践し始めて、それと同時に靴紐を結ぶという行為も生涯やめようと決めたんです。とにかくコンフォータブルで機能的なものを、と意識していく中で、シティユースもできて機能的、そして靴紐を結ばずに済む『Quicklace™』の性能も含めて、サロモンのシューズは自分の生活にかなりフィットしました」
今回彼が着用したのはアッパー部分をメッシュ素材で仕上げた「ACS PRO」の春夏仕様モデル「ACS PRO SHELL」。フットウェアデザイナーのクリスチャン・トレッサーが手掛けた2005年発売の前身モデル「GCS PRO」から引き継がれた機械的かつ有機的な造形は、本モデルでも象徴的なデザインとなっている。
「僕はスニーカーをある種“車”のような感覚で、鑑賞物として見ているところがあるんです。すっきりしすぎているとやっぱり少し退屈で、立体感とか構造的な突出に惹かれることが多い。そういう意味でも、ACS PROはサロモンの中でも一番デザイン性が高いなと感じました。
ACS PRO以外にもサロモンのシューズは何足か持っていますが、何か特別なシーンで履くというより、今の自分のライフスタイルにハマっているから自然と選んでいるだけ。いつも隣にいてくれるパートナーみたいな存在で、完全に日常の一部になっています」


世界をプレイグラウンド化する
「いわゆる“おしゃれ”や“様になる”というのは、その人のアイデンティティや生き方とどれだけ結びついているかだと思うんです。どんな服を着ていても、パーソナリティと結びついていなければどこか嘘っぽく見えますし、その人の価値観と一致していれば成立する。自己認識と他己認識が合致するところに、スタイルの本質があると考えています」
こうした物事の捉え方は、日々の創作や企画の柔軟性にも反映されている。日常のあらゆる出来事や環境とどのように向き合い、どう解釈するか。そういった視点を常に持つことこそが、彼のクリエイティブの根幹にあるのだと語ってくれた。
「最初のコンビニの話にも通ずることですが、“プレイグラウンド”という概念はキーワードとして意識しているかもしれないです。全てを遊びに変えたいんだという感覚。何気ない日常も、どうすればもっと面白くなるかを考えたいですし、ひとつの仕掛けを加えるだけで見え方は変わっていくと思うんです。プロジェクトのディレクターとしてチームを組む時も、『これ一緒にやったら面白くない?』というテンションで声をかけることが多い。自分が面白いと思う視点を共有して、その人の世界の見え方が少し変わる。そういう瞬間を増やしていきたいですし、その積み重ねによって世界が少しでも面白くなればいいなと思っています」
TaiTan 1993年生まれ、神奈川県出身。ヒップホップグループDos Monosのメンバー。クリエイティブディレクターとして様々な企画を手掛けるほか、TBSラジオ『脳盗』やポッドキャスト『奇奇怪怪』のパーソナリティも務める。

ACS PRO SHELL
2005年に発売されたトレイルランニングシューズ「GCS PRO」をルーツとする「ACS PRO」の2026年春夏モデル。高い安定性やデザイン性はそのままに、アッパー部分にメッシュ素材を用いることで、通気性と軽量性を実現した。Black / Black / BlackとRainy Day / Black / Castlerockの2カラー展開。サロモン公式オンラインストア及び取扱店で発売中。https://salomon.jp/





















