GO THE WILD SIDE OF MUSIC
VOL.20 Ghost like girlfriend

変化し続ける音楽シーンという“荒野”に足を踏み入れ、新しい音楽を生み出そうとしている次世代のアーティストを紹介。第20回は儚くも美しい“歌”を響かせるGhost like girlfriend

GO THE WILD SIDE OF MUSIC VOL.20 Ghost like girlfriend top
PHOTOGRAPHY: SHINTO TAKESHI
TEXT: ITAKO JUNICHIRO

 

DNA MUSIC
Ghost like girlfriendを生んだJ-POP

家族からの影響、カラオケ、YouTube……。様々な形で出会い、血肉化してきた、Ghost like girlfriendの音楽性を導きだした30曲


 

INTERVIEW
音楽は生きる上での“救い”

 
岡林健勝によるソロプロジェクト・Ghost like girlfriend。2017年にシーンに現れ、その繊細で洒脱なサウンドと美しい旋律の歌が新たなシティポップの始まりを予感させた。しかし、本人はそうした評価に戸惑いを感じたという。
 
 
「思いがけず多くの人に知ってもらい、話題になったことは嬉しかったけど、時代の波に乗ってオシャレなシティポップを作るアーティストというふうに見られたことに違和感を覚えました。僕は自分自身を削りながら人間味のある音楽を作っているという自負があったから、自分の音楽が本当の意味では届いていないのかなと思ってしまった」
 
 
そこで彼はオフィシャルサイト上でコラムを書くことを始める。楽曲に込めた思いから自分自身の人間関係や日々の中で感じた様々なことまで、岡林は長文で赤裸々に綴っていった。
 
 
「僕は自身の体験や感情をそのまま音楽にしているから、楽曲に込めた意図をまずは人に伝えたいと思ったんです。その上で聴き手に判断してほしかった。僕は自分のことを誰かに理解してほしいという気持ちが強い人間なんです」
 
 
岡林がそうした思いを強く抱くようになったのは、彼がかつて岡林健勝名義でデビューを目指しながらも思うようにいかなかった経験があったからなのかもしれない。そして、その経験があったからこそ、Ghost like girlfriendの音楽性が生まれることになったという。
 
 
「以前は本名で出てギターを弾いて歌うという、いわゆる正統派のシンガーソングライターとして活動していたんですが、なかなか自分の音楽を聴いてもらう機会に恵まれなくて……。でもそういう正統派のスタイルでメジャーで活躍できている人は確実にいるわけで。自分は直球を投げても勝てないのであれば、メロディや歌詞は王道なんだけども、それらを取り囲むサウンドに工夫を凝らしてみようと考えた。それでDTMで誰も使っていないような音色や、詞曲と合わせた時に良い意味での違和感が出るようなアレンジを模索し、とにかく人に届く音楽を作ろうとしたんです」
 
 
今年6月、Ghost like girlfriendはファーストフルアルバム『Version』をリリースした。“明日死んでも良いなんて全て叶うまで無しにしようぜ”というラインに音楽を作り続ける意志を込めた「Last Haze」から、“音の中で探る、心を”と歌う「feel in loud」に至る全11曲。楽曲に収められた生々しい言葉は岡林の感情を刻んだドキュメントと言える。その一方でサウンドプロダクションやアレンジは多彩で、モダンなポップミュージックとして仕上がっている。
 
 
「“一生もの”になるようなアルバムにしたかったんです。リスナーからすればファーストアルバムでそのアーティストと初めて出会う人もたくさんいるわけで、聴いて良ければ聴き続けてくれるかもしれないし、気に入らなかったらもう聴いてもらえない可能性もある。だからこそ、ファーストアルバムには何年経っても自分自身が胸を張って歌い続けられるような曲を入れたかった」
 
 
さらに彼は言葉を続ける。
 
 
「『feel in loud』という曲で“僕は寂しい”と歌っているんですが、その感情は自分が半永久的に付き合っていく隣人のようなものなのかなと思っていて……。たとえばライブにたくさんの人が集まり自分の曲を待ってくれているという光景がふとキレイな幻想に見えてしまうことがある。Ghost like girlfriendを始めて、昔自分が描いていた夢をいくつか叶えることができたけど、どこか他人事のような感覚に陥ることもあるんです。そういう時に“寂しい”という感情が芽生える。でもそういう気持ちも抱えたまま、これからも音楽を作っていきたい。僕は音楽に人生を賭けているし、なにより音楽は自分が生きる上での“救い”のようなものだから」
 
 

GO THE WILD SIDE OF MUSIC VOL.20  Ghost like girlfriend prof

Ghost like girlfriend 1994年兵庫県淡路島出身の岡林健勝によるソロプロジェクト。3枚のミニアルバムを経て、今年6/19にファーストフルアルバム『Version』を発表。新しい形のシンガーソングライターとして注目を集めている
Ghost like girlfriend Spotify オフィシャルアカウント

 
*こちらの記事は2019年7月20日発売の『SWITCH Vol.37 No.8 特集 THE VERY BEST OF DREAMS COME TRUE』でもお楽しみ頂けます