GO THE WILD SIDE OF MUSIC VOL.16 VICKEBLANKA

変化し続ける音楽シーンという“荒野”に足を踏み入れ、新しい音楽を生み出そうとしている次世代のアーティストを紹介。第16回は変幻自在なポップスを生み出すビッケブランカ

GO THE WILD SIDE OF MUSIC VOL.16 VICKEBLANKA
PHOTOGRAPHY: SHINTO TAKESHI
TEXT: ITAKO JUNICHIRO

 

DNA MUSIC
ビッケブランカの“ポップ”の源泉30曲

音楽好きだったという両親からの影響がアーティストとしての自分を形成したと語るビッケブランカ。どこまでもポップな彼の音楽の土台となった古今東西のポップミュージック30曲


 

INTERVIEW
自分が飽きないように、楽しく音楽を作る

 
“ビッケブランカ”という風変わりな名前を持つシンガーソングライター、その音楽の原風景は父が好きだった日本のフォークと母が愛聴していたABBAやベイ・シティ・ローラーズ、カーペンターズなどの洋楽だった。
 
 
「自分から最初に好きになったのがマイケル・ジャクソン。MVを見て、映像と音楽とダンスに衝撃を受け、小学校でみんなの前で真似して踊ったりしていました。目立ちたがり屋だったんですよ(笑)。そのうち妹がピアノを習い始めて、弾き方や楽譜の読み方もわからないままにとりあえず自分も触り始めて。でもただバンバン鳴らしていてもつまらないので、独学でピアノ曲を作って遊び始めたんです」
 
 
中学生になるとMTRを手に入れ本格的な宅録を開始。以来、基本的にはひとりで音楽制作を続けてきたという。
 
 
「バンドを組んだこともあったんですけど、自分はみんなで音を出して楽しむということよりも、自分自身がどんな音、楽曲を作ることができるのか、ということに興味がある人間なんだと気づいたんです」
 
 
やがて音楽で生きていきたいと決意したビッケブランカは大学入学を機に上京する。
 
 
「根拠のない自信があって、上京して1年ぐらいしたらデビューできているだろうと思っていたけど、そんな簡単にはいきませんでしたね。上京してからは試行錯誤の連続でした。大学を中退していろんなスタイルを模索していく中で、ある時、ふとまたピアノに戻ってみようと思った。それで携帯電話を手放して誰からも連絡が来ないようにして、1年間、ひとりでひたすらピアノと向き合うことにしたんです」
 
 
そんな音楽修行の末に、今現在のビッケブランカのスタイルが生まれることになる。
 
 
「まず鍵盤を基軸に曲を作り、パフォーマンスするということと、もうひとつ、裏声を覚えたことで今の自分の個性を確立できたと思っていて。僕は地声が低いので、声を張るとがなる感じになってしまうんです。でもサビの言葉はインパクトある声で聴き手に届けたい。そのことに悩んでいた時に、フレディ・マーキュリーやエルトン・ジョン、MIKAといった人たちの歌に出会い、裏声を存分に使いながらもチャート1位を取れる曲を作れるんだと気づいた。そういうスタイルのシンガーは日本にはあまりいないなと思い、自分でやってみようと」
 
 
鍵盤のスキルとファルセットボイスという武器を得たビッケブランカの快進撃はそこから始まった。2016年にメジャーデビューし、昨年にはテレビドラマの挿入歌の書き下ろしもした。そして、最新アルバム『wizard』はフォーク、ハードロック、ダンスミュージックなど様々な音楽性を取り込みながらも最終的にファンタジックなポップスとして仕上げた1枚だ。
 
 
「僕は自分が飽きないように、楽しく音楽を作るということだけを考えています。だから、常に自分の興味あるサウンドを取り入れ、いろんなタイプの音楽づくりに没頭した2、3カ月の記録がアルバムという形になっているというか。だから、プロになった今もなお小学生の頃に夢中で音楽と遊んでいた感覚のままなんです」
 
 
目立ちたがり屋で飽き性な自分にとって最高のオモチャ。それがビッケブランカにとっての音楽なのかもしれない。
 
 
「たまにのめり込み過ぎて難解な曲ができてしまうこともあるんです。なんていうか……人間ではなくバケモノの自分が作った感覚というか。だけど、そういう曲を後で冷静になって聴いても自分自身が楽しめないんですよね。だからこそ、ポップスとして成立するものを作るという意識はあるかもしれない。それに、僕はこれまでポップスしか聴いてこなかったし、その根っこはこれからも変わらないと思います」
 
 

GO THE WILD SIDE OF MUSIC VOL.16 VICKEBLANKA
ビッケブランカ 2016年に「Natural Woman」でメジャーデビュー。以降、精力的に作品制作・ライブ活動を展開している。今春ニューシングルをリリースし、6/14にはワンマンライブ「VOOM VOOM ROOM」を開催する
ビッケブランカ Spotify オフィシャルアカウント

*こちらの記事は2019年3月20日発売の『SWITCH Vol.37 No.4 特集 WEAR YOUR REALITY 藤原ヒロシ at DOVER STREET MARKET GINZA』でもお楽しみ頂けます