【PHOTOGRAPHERS & INSTAX mini 99】気鋭の写真家に訊くINSTAX mini 99の楽しみ方 〜阿部裕介篇〜

“チェキ”の愛称で親しまれてきたINSTAXのアナログインスタントカメラ最上位モデルが、

この春、実に10年ぶりに刷新。INSTAX mini 99™が新登場した。
令和生まれのアナログインスタントカメラINSTAX mini 99で、写真表現の幅はいかに広がるのか。第一線で活躍する3名の気鋭写真家にINSTAX mini 99を渡し、撮影に臨んでもらった

TEXT: SWITCH

阿部裕介[人と紡ぐ写真]

世界を旅しながらシャッターを切り続ける阿部裕介は、INSTAX mini 99を手にアメリカ最古のトレイルへと向かった。過酷な旅路の果てに彼が写したものとは

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【Abe Yusuke “Hi, there!”】

| 被写体の物語をカラーで表現する

──今回の撮影テーマを教えてください。

「INSTAX mini 99を持って、アパラチアン・トレイルというアメリカ最古のトレイルを一週間歩いてきました。当初は、トレイル中にすれ違った人とかを撮っていこうと思っていたんですけど、歩いている途中で一人も会わなくて、唯一会えたのが、ダンケンさんです(四枚目)。最後の到着ポイントにタクシーを用意していたんですけど、雪が凄すぎてタクシーがそこまで入って来られなくて、『そこから20分歩いたところで待っている』と言われて歩いたんですけど、三時間半歩いてもタクシーがいなくて。その時にたまたまマウンテンバイクで上がってきた人が『あと30分くらい歩けば道に出るよ』と教えてくれたんです。でもその時点でもう結構ヘトヘトで。その人はマウンテンバイクで行っちゃったんですけど、すぐに降りてきて『家に戻って車取ってくるから乗せていってあげるよ』と。その人がダンケンさんです。あとは今回のトレイルはNY在住のテレビプロデューサーの上出(遼平)さんと一緒に行っていたので、上出さんご夫妻と、吉田実代さんというNY在住のプロボクサーの方を撮りました」

──なぜ今回は人を撮ろうと思ったのですか?

「チェキのいいところって撮ったその場でプリントをあげられることだと思っていて、その利点を生かすことを今回はメインで考えていました。例えばパキスタンやパレスチナで出会う子どもたちに撮った写真をあげられたら、その写真って子どもたちの宝物になって心の支えにもなりうるんですよね。僕はよく『写真をあげるよ』と言うんですけど、膨大な量を撮っているのでプリントするまでに一カ月とか経ってしまって、渡すのに時間がかかってしまいます。だから撮ったその場であげられるというのはすごくよくて。吉田さんは去年NYに引っ越して、それから世界チャンピオンになった方なんです。お子さんはローカルスクールに通っていて、すでに英語も話せるようになっています。二人で力を合わせてタフに生きている親子だから、その瞬間を写真に残してあげたいなと思って。お子さんが桜を見ながら『ママの色だね』って言っていたので、ソフトマゼンタのカラーエフェクトを使って撮りました」

──被写体のイメージカラーに合わせてカラーエフェクトを選ばれたんですね。

「その人のテーマカラーをイメージして撮れるのがいいなと思いました。桜の下でツーショットを撮った後にお子さんが『ピンクがママのテーマカラー』と話していて、それを聞いてすぐにその色味で撮ってあげられる。普通だったら後からフォトショップを使ったりして作業することを、INSTAX mini 99だとその場でできる。上出夫妻のソロショットをウォームトーンで撮っているのは、夜だったのでどうしても暗い印象になってしまうのをもう少し華やかな印象にしたいなと思って、ウォームトーンに変えて撮りました」

──アナログの操作感はいかがでしたか?

「僕は普段からアナログカメラをめちゃくちゃ使うので、アナログの方が手に馴染みます。デジタルは覚えなくてはいけない操作も多いですし、調節も加工も無限にできてしまうじゃないですか。でもINSTAX mini 99はその場で変えてパっと撮れる。ビネットで撮ろうと思えばスイッチを切り変えるだけ。自分はどちらかというとドキュメンタリーを好むタイプなので直感的に撮れる方が合っていると思いますし、アナログの方がその時の感覚を残しておける。その場で全てできてしまう方が、僕は好きです」


阿部裕介 1989年生まれ。写真家。大学在学中よりアジア、ヨーロッパを旅する。主な写真集に『ヨサコイ』(2019)、インドの電車旅の記録とバラナシの街を撮影した『Relagaadee』&『Shanti Shanti』(2024)など

▷草野庸子篇 6月4日公開予定

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PHOTOGRAPHY:OSHIMA TORU

INSTAX mini 99

“チェキ”の愛称で親しまれてきたINSTAXの、アナログインスタントカメラ最上位モデル。“究極のアナログカメラ”と称される理由は、細部にまでこだわったアナログなデザインと操作感、そしてさまざまな調整を可能にする機能面の充実にある。カメラ内部のLED発光でフィルムに直接照射して色を表現する「カラーエフェクトコントロール」や、周辺光量を抑え、中心部をフォーカスした写真を撮影できる「ビネットモード」、明暗を調整できる5段階の「濃淡調整」、シャッターを最長10秒まで開放できる「バルブモード」、1枚のフィルムに2つの画像を重ねる「二重露光モード」などの機能を駆使することで、アナログならではの唯一無二の1枚を撮影することができる。INSTAX mini 99と共に、新しい写真表現の旅へと繰り出してみてはいかがだろうか。
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