海からやってきた服のはなし

文=Coyote編集部

パタゴニアから初の児童向け絵本『しんぴんよりもずっといい』が刊行された。物語は絵本作家のロバート・ブローダーが、イラストはニューヨークを拠点に活動するイラストレーターのレイク・バックリーが担当した。

チリの小さな漁村に暮らす二人の子ども、イシドラとフリアンが海水浴に遊びに行くところからこの物語は始まる。海の中で二人は、捨てられた漁網に絡まったアシカの悲鳴を聞きつける。

絡まった網をほどいて海の友だちを解放してあげた二人は、海から網を引き上げる。そして、一羽の鳥が小枝を使って巣を作る姿から着想を得て、もう一度役立つものにリサイクルすることを思い立つ。

リサイクルセンターに網を持ち込んで新しく生まれ変わった服を見た二人が抱いた感情は「しんぴんとおんなじだね」ではなく、「しんぴんよりもずっといい!」だった。

¥1,650(税込) パタゴニア直営店全店ほかで発売中

絵本に登場する放棄された漁網は「ゴーストネット」と呼ばれ、世界の海洋汚染の最も有害な形態のひとつと考えられている。このような漁網を含むプラスチックが毎年816万トンも海洋に流出しているのだ。その現実を『しんぴんよりもずっといい』は、根拠となるデータも付記して伝えている。絵本でありながらも海洋汚染問題に対する現実的な解決策を描くことで、子どもたちの環境への関心を高めることをねらいとしている。今着ている服はどこから来たのか、そして“地球のために良い選択”は何かを考えて行動に移すことで、自分たち子どもでも地球を救う手助けができるのだという自信にも繋がる。このように一見難しいテーマであっても、目で見て楽しめる絵本という形にすることで、親子で一緒に環境問題について話し合う最適な教材になり得る。大人も子どもも分け隔てなく、次世代のために大切なメッセージを伝えていこうとするパタゴニアならではの姿勢がこの絵本には感じられる。

絵本自体も100%再生紙に印刷して作られており、本文は日本語とスペイン語の二カ国語で綴られている。また、この物語は実際にある海洋汚染の現実的な解決策から着想を得ている。廃棄された網からリサイクルして作り出されたブレオ社の「ネットプラス素材」は、パタゴニアが作る様々な製品にも活かされている。

「しんぴんよりもずっといい展」が開催中

本書の刊行を記念した展示がパタゴニア福岡店で開催中。絵本の中の出来事を大きな絵や造形物を用いて立体的に展示することで、子どもたちが自分ごととして体験することができる。福岡店での展示は8/20まで。その後はパタゴニア直営店を巡回する予定となっている。