集合体として表現するデザイン。新進気鋭のファッションブランド「KHOKI」に迫る

TEXT: KAWAKAMI HISAKO

みなさんはファッションブランド「KHOKI(コッキ)」をご存知だろうか。

様々なブランドで活躍をする若手のファッションデザイナーたちが集まったコミュニティのプライベートプロジェクトとして始まったKHOKI。2019年に正式にローンチされて以降、2022年にはファッションアワード「TOKYO FASHION AWARD 2023」、翌年には国際的なファッションプライズである「LVMHプライズ2024」のセミファイナリストにノミネートされた。

複数のデザイナー、パタンナーによって構成されているKHOKIは、誰か一人の才能を際立たせるのではなく、あくまで“一つの集合体”としての活動にこだわっている。KHOKIの在り方を紐解くことで、ファッションブランドの新たな存在意義が見えてくるのかもしれない。

――KHOKIを立ち上げるまでの経緯を教えてください。

「KHOKIは同世代のファッションデザイナーのコミュニティが起点になっています。休日にみんなで遊んだり、飲んだりしている中、プライベートでなにかつくりたいよね、という話になりました。最初は遊びの延長線上で、各々が好きなものをつくって、それを寄せ集めて展示会をしました。数シーズン、そういった展示会をしていく中で、バイヤーからの評判もよく、ブランドとして本格的に立ち上げました。ブランドを立ち上げる段階になって、それぞれの個性を寄せ集めてみせるのではなく、箱として見せていきたいという意識になりました」

――一人のデザイナーを立てるのではなく、“箱”として見せようと思ったのはなぜでしょうか。

「デザイナーという存在を特別視していないというのが大きいですね。極論ですが、すべての人がデザイナーであるという感覚があります。パタンナー、生産管理、PRチーム。お客様の手元に商品が届くまでの工程すべてがデザインと捉えているので、なにかが突出した存在だとは思っていないんです。あとは、メンバーが複数いることで、それぞれのバックグラウンドを掘り下げたり、趣味や好きなものを知って、それを服に落とし込むことができる。一人でデザインするより多くの物事にアクセスができるんです」

――ファッションデザイナーという存在そのものに対してはどのように捉えていますか?

「長いファッション史を振り返る中で、再構築を含めてデザインし尽くされていると感じています。この時代を生きる僕らが表面的に新しいデザインを模索しても、一人の人間の思考では限界がある。その部分に抗いたいという思いもあって、KHOKIは個ではなく多くのブレインを持ったチームとしてファッションに向き合いたいと考えています」

――シーズン毎のコレクションに対してはどのような思いがありますか。

「KHOKIはシーズン毎のテーマを大きく設けていません。前回トライしたことをデベロップして、精度を上げていく部分が大きい。一番大切にしていることはクオリティの高さ。いわゆるラグジュアリーブランドのような縫製の精密さや高級な素材を使うということよりも、生産背景にある工場や技術者の方々との取り組みに対して真剣に向き合うことが僕らにとってのクオリティの高さに直結していると考えています」

――コレクションのアイテムを拝見していると、刺繍の技術や布地にこだわられていますね。

「そうですね。今力を入れているのはインドの技術者の方とのものづくりです。例えば、この刺繍はインドのカンタという手刺繍の技術でつくられています。ポツポツとした糸の粒が特徴的です。KHOKIには『メモリアルパンツ』というアイテムがあって、メンバーの好きな物事を柄としてパンツに記しています。伝統的な技術をモダンなデザインにアップデートしたいと考えています」

――一方、2023年には「Rakuten Fashion Week TOKYO 2023A/W」で初めてのランウェイを行いましたね。普段発表されているコレクションとは趣向が違う服が散見されました。

「あの時は時期の問題でもあるのですが、ショーのために服をつくりました。アイディアが沸きやすいキーワードをメンバー内で共有したいと考えていて、最終的にファンタジーに落ち着きました」

――ショーを行うことに対してはどのように捉えていますか。

「僕らがファッションを始めたいと思った原点に、ファッションショーを見て、それに感動して心が揺さぶられたという原体験があります。だからこそ、自分がショーを開催できる環境にある今、見た人が心揺さぶられるようなエンターテイメントの要素も含んだものにしたいという思いがあります」

――2月にも東京でショーを行われるそうですね。それを踏まえて、今後のブランドの展望を教えてください。

「昨年の秋冬コレクションからパリのショールームが始動して、海外での活動に力を入れていきたいという思いが強くあります。その上で、今回の東京でのショーは一つの節目にはなるのではないかと考えています。ショーをすることによって今までの自分たちとは違うものが見えてくるかもしれない。そのことを知るのが、今回のショーで一番価値があることなのではないかと思います」

instagram: @khoki146