戦争と平和を伝えるために生み出された絵本に込められた願い、次世代の子供たちへの思いを探る(Coyote No.77/7月15日発売)

7月15日(金)、「Coyote No.77 特集 絵本の中の『せんそう』」が発売となります。

2022年7月発売のCoyoteは、絵本を通して戦争と平和を考える特集です。戦後77年を迎えた今、戦争はふたたび私たち日本人にとっても身近に迫りつつあります。そのような状況下を、私たちはどう生きるべきなのか。そのヒントを探るべく、あらためて日本の戦争体験に注目しました。

作家 池澤夏樹と画家 黒田征太郎が被爆建物「旧広島陸軍被服支廠」をモチーフに作り上げた絵本『旅のネコと神社のクスノキ』の制作の舞台裏を取材しながら、2人が絵本に込めた特別な思いを伝えます。さらに被爆証言者 切明千枝子や、原爆にまつわる絵本の出版や平和活動に尽力する詩人 アーサー・ビナードへのインタビューを通して、“戦争の語り部”を失いつつある現代において大切なこと、未来を担う子どもたちに対してできることについて考えます。
 

絵本ができる

ある日黒田征太郎からカードが届いた。「今“ヒロシマのこと”を少し手伝っています。あらためて1945年8月6日を考えます。 広島駅近くに『被服支廠』と呼ばれる建物があります。4棟からなる被爆遺構です……」

対話
池澤夏樹 黒田征太郎

陸軍被服支廠を訪れた池澤夏樹と黒田征太郎。戦争とは何か、二人はそれぞれの思いを語りながら、絵本の構想を練っていきました。

木と組む絵本を作る
杣工房での仕事

池澤夏樹が考えた『旅のネコと神社のクスノキ』という対話の物語を、黒田征太郎は描き起こしていく。この物語に立体の美しさを取り入れるべく、黒田は旧知の間柄だった岐阜県付知の工房「杣工房」を訪ね、木工家の早川泰輔とともに絵本の世界を立体的に作り上げていきました。

アーサー・ビナード
戦争と平和を考えるための4つの質問

戦後77 年を迎えた今、私たちは“ 戦争の語り手” を失いつつある。身近へと戦火が迫り、揺れ動くこの現代社会を私たちはどのように生き延びれば良いのか。そして未来のためにできることとはなにか。 遺構や遺品の声なき声に耳を傾け、さまざまなかたちで日々、語り続ける詩人アーサー・ビナードにひとつの紙芝居を手がかりに話を訊きました。

 

夏にぴったりのアウトドアコンテンツも充実

ジェリー・ロペス
海に遊ぶ

世界を旅しながらサーフィンというスポーツをライフストーリーに変えてきた男、ジェリー・ロペス。なぜ彼はレジェンドとして長く憧れの存在であり続けるのでしょうか、COYOTEは彼の魅力を伝えるべく数多くの取材を敢行してきました。彼を追ったドキュメンタリー映画、『ジェリー・ロペスの陰と陽』の公開に先駆け、これまで数々のCOYOTEの取材で語ってくれた珠玉の言葉を一挙掲載。

※「ジェリー・ロペス 海に遊ぶ」はSWITCH ONLINEで特別公開中
※ 特別エッセイ「デイパック一つを携えて」はこちら

マーク・アンドレ・ルクレール
ある若きアルピニストの素顔

なぜ冒険家は険しい山をより困難な方法で登るのでしょうか。その理由が富や名声でなければ、何のために命を懸けるのでしょうか。今夏公開された、ソロアルピニスト、マーク· アンドレ· ルクレールのドキュメンタリー『アルピニスト』。その監督を務めたニック· ローゼンへの取材から、偉大な功績を残した若きアルピニストの生き様を紐解き、クライミングという行為の本質について考えます。

※「マーク・アンドレ・ルクレール ある若きアルピニストの素顔」はSWITCH ONLINEで全文公開中

山崎猛と北のアルプ美術館

今年で開館30周年を迎えた北のアルプ美術館は、山の文芸誌『アルプ』をこよなく愛した山崎猛がその精神を次世代に伝えるために設立した美術館です。2020年に山崎猛が急逝した後は妻のちづ子さんが館長に就任し、一般社団法人として運営を続けています。COYOTEが初めてここを訪ねたのは2017年、『アルプ』責任編集者の串田孫一を特集した時でした。COYOTEの完成直後に再訪し、その時に山崎と交わした言葉、『アルプ』への思いを掲載します。

水越武 夢の軌跡

山岳写真において世界から注目される写真家、水越武。若き日に写真家の田淵行男に師事し、数々の山行を共にした後、日本の山岳や原生林、ヒマラヤ、北米・シベリアの森林、中南米・ボルネオ・アフリカの熱帯雨林と地球をフィールドに半世紀以上写真を撮り続けてきた水越武のインタビュー。

イッセー尾形
賢治再訪としての『税務署長の冒険』

イッセー尾形が宮沢賢治の世界を旅する連載の第2回は、密造酒を取り締まるために活躍する税務署長の姿を描いた『税務署長の冒険』のオマージュ。明治32年の「濁酒密造禁止令」によって自家用酒が飲めなくなった農民達に同情した物語です。

五十嵐大介
島或る記

島の数だけ独特な風土と生活文化がある。自然風景や暮らし、目には見えない世界を描いてきた漫画家の五十嵐大介は数々の神話の舞台として知られる壱岐を訪ねました。古くは魏志倭人伝にも登場し、元寇の激戦地にもなったこの島は、五十嵐の目にはどう映ったのでしょう。
<そのほかのコンテンツ>
●池澤夏樹解説 陸軍被服支廠

●切明千枝子さんのこと
文=松谷文緒
自身の被曝体験の証言活動を続ける切明千枝子と陸軍被服支廠

●木で薪ストーブを作る 父 早川謙之輔のこと
文=早川泰輔
木工の名匠として名を馳せた父 早川謙之輔について、息子である早川泰輔が語る

●木と遊ぶ 木に学ぶ 早川謙之輔の木工作品
かつて一緒に木工玩具を製作した黒田征太郎が語る、早川謙之輔との思い出

●SESSION 藤原新也×黒田征太郎
戦争画 死を想え、そして生を想え。
門司港にゆかりのある二人の作家が描く、即興の戦争画

●ブックガイド 絵本の中の「せんそう」
戦争をテーマに描かれた国内と海外の8冊の絵本

馬目弘仁インタビュー 消えることのない灯
写真=黒田誠 文=成瀬洋平
ヒマラヤの巨壁に挑み続ける日本を代表するアルパインクライマーの新たな挑戦

Foxfire True to nature Vol.11
日本赤十字社のルワンダ事業の代表として現地で活動する吉田拓のインタビュー

SEA TO SUMMIT 海と山と人を繋ぐ道
環境スポーツイベント「SEA TO SUMMIT」のオホーツク大会レポート

●青木奈緒* 森へ 第6回
*「緒」は旧字体

●最初の一歩 第77回 五味太郎 記憶
絵=楓真知子

●谷川俊太郎 詩 ハダカだから
絵=下田昌克


Coyote No.77
特集 絵本の中の「せんそう」
1,320円(税込)

ISBN:978-4-88418-591-6
2022年7月15日刊行

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