日々の選択や習慣が、個々のスタイルを形づくる。自由な思考や行動を支えるSalomon Sportstyleは、さまざまなジャンルで活躍するクリエイターにとってどのような存在なのか。彼らの価値観やクリエイティブの背景を通して、その魅力に迫る連載企画。
TEXT: IKEDA MASATO

居場所をつくる
2024年11月、京都・左京区にオープンしたオルタナティブスペース「koen」。カフェ、ショップ、ギャラリー、アトリエの機能を併せ持つこの場所は、写真家・嶌村吉祥丸が掲げる「縁が交わる場」というコンセプトのもと生まれた。東京で生まれ育ち、現在も東京を拠点に活動する嶌村にとって、京都は頻繁に訪れる場所ではなかったという。
「仕事や写真の展示などで少しずつ京都に足を運ぶ機会が多くなり、徐々に自分の中でコミュニティや居場所のひとつだと感じるようになりました。東京ではsame gallaryというアートスペースを運営しているのですが、京都でも何か“場”を持ちたいと思ったんです。何かを発信する場所というよりも、そこにいることで自然と何かが生まれるような場所。目的化された建物ばかりが立ち並ぶ今の世の中だからこそ、もっと遊びや余白のある空間をつくれたら、と」
昨年11月で1周年を迎えたkoen。オープン前からそのあり方を模索してきた嶌村にとって、koenの姿はどのように変化したのだろうか。
「“まだ1年なんだね”と言ってくださる方がいるくらい街に馴染んできたというか、そんな感覚はあります。ここを目がけて京都に来てくださる方や、常連の方も増えてきたのですが、根本的な考え方は今も変わっていません。お客さんとスタッフの何気ないコミュニケーションや、窓の向こうに見える公園で子どもや犬が遊んでいる借景がゆるやかに続いていってほしい。それがオープン当初からの願いです。
公園がきちんと機能している社会は、どこか平和に思えるんです。そんな場所がひとつでも増えたらいいなと思っていて、それが人によっては近くの喫茶店でも図書館でもいい。ここもカテゴリーとしてはカフェやショップですけど、もっと自由に行き来してほしいんです。僕が提示するのはあくまで枠組みで、その余白に対してお客さんたちが自由な解釈を展開することで、このkoenに“場”としての存在意義が生まれたらいいなと思っています」


環境と自分を繋ぐ選択
koenのショップには、嶌村自身がセレクトした洋服や小物類の他、オリジナルアイテムも並ぶ。ファッションにおいてはどのようなこだわりを持っているのか訊ねた。
「仕事の場合、その日の撮影現場によって着る洋服を変えることが多いですね。動きやすさを重視してラフな格好をする場合もあれば、セットアップを選ぶこともあります。その空間にいて不自然じゃないか、そしてその仕事で対峙する人や環境に対して自分が馴染めるかという部分を大切にしています」
サロモンとの関わりもまた、そうした考え方の延長線上にある。直近では写真家として「RX-SLIDE」のビジュアルを手がけた嶌村だが、サロモンのシューズは日常的に愛用しているという。
「サロモンのシューズは機能性が高いのに、いわゆる“ギア”っぽくなりすぎないところがいいですよね。仕事以外で着る洋服は気分で選ぶことが多いのですが、どんな服装にも自然に馴染んでくれる感覚があります。それとkoenが出来てからは、少し離れた場所にアトリエを構える作家さんを訪ねたり、陶芸家の窯場に足を運んだりと、ちょっとしたフィールドワークのような時間が増えました。舗装されていない道や不安定な足場を歩くこともありますし、一日中立ちっぱなしの日もあります。サロモンを履いていればどんなシーンも気にせずに行動できる安心感がありますし、着脱が簡単なので靴を脱ぎ履きする場面でもストレスなく過ごせます」
今回彼が着用したのは、2009年に発売された高性能トレイルシューズ「XT-Hawk」を原点とする「XT-WHISPER」。しなやかな曲線美からなる高いデザイン性に加え、ブランドを代表する「Quicklace™」システムやフィット感と安定性を生む「Sensifit™」を搭載する本モデルに、新しく3色が加わった。
「このXT-WHISPERにも通じることですが、サロモンのシューズの “何色”と断定しきれないカラーリングが好きなんです。真っ白、真っ黒、というよりも、その間にある色。アッシュがかったグレーだったり、ライトベージュのような曖昧なトーンだったり。最近の個人的な気分も、グレーやシルバーみたいな色味に惹かれることが多いんです。koenの什器にもいくつかアルミ素材を使用していますが、いわゆるギラギラしたシルバーではなくて、少し鈍い、鉄のような質感なんです。そういう色は派手さがない分どこか落ち着いた印象を受けますし、ニュートラルな色としてある種の普遍性を持っているからこそ、日々の使いやすさにも繋がってくるのではないかと思います」


囁きが、波紋になる
写真家としての活動、koenやsame galleryのディレクションに加え、「ラーメン吉祥丸」やフレグランスブランド「kibn」のプロデュース。分野は異なるものの、その根底には一貫した考えがあるという。
「自分の活動の軸には何かを媒介する存在、つまり“媒介者”であるという意識があるんです。写真においては、この世界で起きていることをカメラや自分を通して表現する。koenも、人と人、人とものが出会うための媒介のようなものです。間にある存在の在り方ひとつで、物事の受け取られ方は大きく変わりますよね。だからこそ間に立つという姿勢を常に大切にしたいですし、自分の活動を考えるうえでひとつの大きなテーマとなっています」
「Style whispers, personality echoes.」というタグラインが掲げられたXT-WHISPERの新作。 静かな囁きから個性が広がっていくというコンセプトに、嶌村は自身の姿勢を重ねてこう語った。
「僕自身も、声を大にして“こうしよう”とか、“こうあるべきだ”というふうに伝えるよりは、自分の周りや社会に対して、“こういうのはどうでしょうか”と問いかける存在でありたいと思っています。特に僕が撮っているものは、すごく抽象的な風景やスナップに近い、誰もが見たことのあるような景色が多いんです。でも、小さな声でもいいから世の中に問いかけたり、囁いたりすることで、それがどこかで誰かに届くかもしれない。波紋のように広がって、別の誰かがまた受け取ってくれるかもしれない。その可能性を信じていたいんです。そのために、自分はこれからも学び続けたいですし、いろいろな人の声に耳を澄ませていたいですね」

XT-WHISPER
「XT」シリーズのデザイン系譜を受け継ぎ、ブランドが誇る SensiFit™とQuicklace™システムを搭載することで、高いホールド感と履き心地を実現した一足。新たに登場したCASTLEROCK / FTW SILVER / SPELLBOUND、ALMOND MILK / FTW SILVER / LAVA FALLS、VANILLA ICE / FTW SILVER / PERSIAN JEWEの3色は、サロモン公式オンラインストア及び取扱店で発売中
※文中に登場するショップ「koen」での取り扱いはありません
嶌村吉祥丸 東京生まれ。アーティスト・写真家として、さまざまな表現者と協働しながらsame gallery (東京)やkoen(京都)のディレクターを務めるほか、「ラーメン吉祥丸」やフレグランスブランド「kibn」のプロデュースも行う





















