
ひとくちに「旅」といっても日帰りや二泊三日の国内旅行から海外旅行までそのかたちは様々であるが、旅に何かひとつテーマを設けるだけで、よりオリジナリティある充実した体験になる。
東京から新幹線で約1時間。静岡市は言わずと知れたお茶のまちだ。市内にはおよそ850軒のお茶農家があり、茶商の数も全国有数。2025年には緑茶の購入金額も全国1位となり、日常にお茶が深く根付いている。そんな街にはお茶の文化に触れられるスポットが点在している。
徳川家康が晩年を過ごした駿府城の跡地に広がる駿府城公園は、市街地にありながら歴史と自然が調和する場所。日本古来の伝統に基づいて復元された櫓や東御門が建つ奥には、紅葉山庭園が静かに佇む。そんな庭園の一角にある茶室には、点茶体験ができるプランがある。お茶の作法を一から丁寧に教えてもらえるので、初めての方でも安心だ。数寄屋造りの「雲海」で自ら抹茶を点てるひとときは、自然と呼吸が整い、心が静かにほどけていくのを感じる。
静岡市内の自然豊かなエリア・通称オクシズに位置する玉川地区は、静岡県のお茶の産地の中で最も古い歴史を持つ「本山茶」のルーツとされる場所である。江戸時代から続く「志田島園」は、16代目・佐藤誠洋さんを中心に茶葉の栽培から製造までを一貫して行っている。茶畑を歩きながらお茶の飲み比べや茶工場を見学できるツアーでは、茶葉の栽培や製茶の仕方などつくり手の言葉を通してお茶の奥深さに触れることができる。斜面に広がる茶畑を望むテラス席で味わう煎茶やほうじ茶、紅茶の味わいも格別。茶園の一角にはわさび田もあり、この土地の清らかな水の豊かさを物語っている。
静岡市内のカフェ「雅正庵」では、“お茶を食べる”というアプローチでお茶の可能性を広げている。1949年創業の製茶問屋・小柳津清一商店が運営するこの雅正庵は、抹茶を使った料理やスイーツを通して「お茶のある暮らし」を現代的に提案。静岡茶とスイーツのペアリングを楽しむアフタヌーンティー「するがヌーン茶(ティー)」は、抹茶生パスタや抹茶ポタージュなど意外性のある組み合わせが並び、固定観念にとらわれないお茶の魅力に出会える。また抹茶クリームを大福で包んだ抹茶大福「鞠福」や抹茶モンブランなど抹茶をふんだんに使ったスイーツが楽しめるのも、自社工場で製造を行う問屋ならでは。
様々な切り口から、今のお茶の文化を楽しめる静岡市。「お茶」をテーマに旅をすることで、普段の旅とはまたひと味違ったこの街の魅力に出会えるだろう。




























