FROM EDITORS「教えを旅する」

「ウタ拝」、沖縄という島を語り歌い、今日まで紡ぎつづけているもの、先達が歩んだ道のり、過去、現在、そして未来へとその先に想いを寄せるというコンサートが10月27日東京は渋谷文化センターさくらホールで開かれた。「ウタ拝」は今年で3度目、戦後70年という節目の2015年に初演を迎えて2016年とそして今年となる。今までは沖縄でのみ開かれていたが、今年は東京初公演が実現した。

主宰は辺土名直子、宜野湾出身のピアニストだ。彼女は「ウタ拝」の意味をこう説く。

—— 天災、人災、直接対峙しなければ過ぎたことは忘れがちで、日々生きて行くってそういうことだとも思います。でも過去は決してなくならない。73年前から眠る壕(ガマ)の闇の中にいたのは自分だったかもしれない。生まれ島を深く知ろうと思いました。それが先達へのせめてのも敬意と葬いで、限りない優しさになると。そして私たちの想いと、選択の連続でまた道ができていくのだと。この公演は、私の中に刻まれた等身大の沖縄です——

この辺土名のよびかけに応えたミュージシャンの一人がCoccoだ。二人は関邦高校の同級生で一緒にバンドを組んでいたこともあった。Coccoはステージで彼女が歌のきっかけを作ってくれたと紹介する。今まで2回のウタ拝は踊りで参加していたCoccoだが、今回はメインボーカルをつとめた。そのこともあって会場は満員の盛況だった。

辺土名のピアノ伴奏によって歌われたCoccoの「てぃんさぐぬ花」は圧巻だった。

夜走らす船や 子ぬ方星目当てぃ

我ん生ちぇる親や 我んどぅ目当てぃ

夜の海を往く船は、北極星を目印にする。私を生んだ親は私の手本という歌詞は、まさに彼女のオリジナルのような力強さを湛え、まるで時代を遡り、沖縄に古くから伝わる自然からの叡智を旅するように響いてきた。

歌を聴きながら、音楽によって繋がれる「うむい」(想い)を自分に何度も問いかける大切な夜となった。失われていく、しかし全てを失くす前に歌がある。

スイッチ編集長 新井敏記