EVENT REPORT 次世代の子どもたちへのメッセージ「UNIQLO LifeWear Day 2023 with Ayumu Hirano」

ユニクログローバルブランドアンバサダーで、プロスノーボーダー/スケートボーダーの平野歩夢とユニクロによる、次世代の子どもたちを応援する「UNIQLO LifeWear Day 2023 with Ayumu Hirano」が、平野が幼少期から通い詰めたホームゲレンデである横根スキー場(山形県小国町)で開催された。その特別な1日の模様をレポート。

写真と文=奥田祐也

昨年の北京冬季五輪のスノーボード男子ハーフパイプでの金メダルが記憶に新しい平野歩夢。今年2月にはアメリカ・コロラド州で開催されたDEW TOUR男子スーパーパイプ決勝で初の優勝を飾るなど、海外で輝かしい記録を打ち立て続ける平野の姿が、3月5日、山形県小国町の横根スキー場にあった。小さいながらも日本初の常設公式パイプがあることで知られており、幼少期の平野は毎日父親が運転する車で1時間近くかけて通い詰め、兄と一緒にハーフパイプの鍛錬を積んできた。

そんな思い出の地で初開催された『UNIQLO LifeWear Day 2023 with Ayumu Hirano』は、ユニクログローバルブランドアンバサダーをはじめとする世界の一流アスリートやさまざまな団代と連携し、世界中の子どもたちを応援する次世代育成活動の一環とし企画されたもの。この日集まったのは県内外の小学4年生から中学1年生の計17名。世界トップレベルの技術を間近で見て、平野と一緒にハーフパイプを滑って直接指導を受けられるこのイベントは、今後プロの世界を目指す子どもたちにとってまたとない機会となった。

午前中に実施されたハーフパイプセッションは45分間を2セット。間隔を空けて順に滑る子どもたちに混ざって、平野もお手本を見せるように滑り降りる。「いつも自分の練習ばかりだったので、こうやって人に教えるのは新鮮です」と話す平野は、子どもたちひとりひとりに積極的に話しかけ、時に後をついて滑りながら的確なアドバイスを与える。例えば、「メローなラインで上手にターンができているから、今のまま怖がらずにスピードが出せたらリップに抜けられるよ」というふうに、まずはいいところを伝えて伸ばしてあげるという良き指導者の一面が垣間見えた。

横根スキー場のハーフパイプは、平野が普段海外で滑っているハーフパイプと比べてひと回り小さいが、基本的な練習には適していた。かつて平野は朝のオープンからクローズまで食事をとる時間も惜しんでノンストップで滑り続け、多い日は300本も滑っていたというから驚きだ。

横根スキー場で働く高橋恒行さんは、昨年平野歩夢を特集した『SWITCH』の取材で次のように話していた。「現役が終わったら、ここで歩夢が指導してくれて、それを自分が眺めている、そんな未来が訪れてくれたらなと思っています」と。まさかこんなにも早くその未来が訪れるとは思っていなかったに違いない。

地元民や報道陣を湧かせた1時間半に及んだ子どもたちとのセッションは、あっという間に終わりの時を迎えた。「もっとじっくり見て教えてあげたかった」と時間を惜しみながら、平野は感謝の言葉でハーフパイプセッションを締め括った。

「4歳から中学生まで毎日ここに通い詰めて練習した時間があったらから今の自分があります。懐かしく思うと同時に、帰って来れたのが嬉しい。それに、ここでパイプを管理してくれている恒さん(高橋恒行)のように、家族以外にもサポートしてくれた人たちのおかげでここまでやってこれました。恩返しになれたらいいけど、これからもこのようなイベントを通じて子どもたちをサポートしていきたい。小さい頃は可能性と夢に対して熱心になれる時期だと思うので、もっとみんなの心構えを聞いてみかったんですけどね。このような時間を年に1回でも持てたらと思うので、この続きが生まれることを楽しみにしたいです」

午後は室内に会場を移して、スペシャルトークセッションが開催された。イベントに参加した子どもたちと同じくらいの歳の頃は日々どのような練習をしていたかなど、午前のハーフパイプセッションでは伝えきれなかった話を、今だから話せる本音も交えながら子どもたちに話すと、トークセッションの終盤には子どもたちからも次々に質問の手があがった。

例えば、「うまくなるためのいいトレーニング方法があれば教えてください」という質問には「トレーニング方法も大事ですけど、1日のリフト券を無駄にしない気持ち、時間を無駄にしないということを小さいながらに意識していました」と答え、練習に臨む心構えを説いた。

怪我と隣り合わせのハーフパイプにおいて、「もうこんなの絶対やりたくないって思うことはありますか?」という質問には、エールを贈るようにこう答えた。

「それはけっこうあるかな。目標や夢が強いほどそういう気持ちにぶつかることがあります。ハーフパイプの外に飛び出したりボトムに帰されたりすると、跳ぶのが怖くなることも多いです。でもそこを乗り越えることが大切で、スノーボードじゃなくてもスポーツで身体を張っている以上、絶対にぶつかる部分ではあると思っています。それに僕の場合はその気持ちにぶつかったのが小さい頃でよかったとも思います。大人になればなるほどもっと失敗が怖くなる。だから今がチャンスだと思うし、積極的にチャレンジしてほしい」

平野はこれまで度々小誌のインタビューで、次世代を意識した発言を繰り返してきた。ユニクログローバルブランドアンバサダーに就任した4年前のインタビューでは、「誰もが小さい時にはスターとなる存在がいたように、自分も世界の子どもたちからそういうふうに見てもらいたい」という思いを持ち、スノーボードとスケートボードの二刀流に挑戦することについては「こういう選択肢もあると子どもたちに提示してあげたい」と語っていた。

スケートボードでの東京五輪出場に、北京冬季五輪での悲願の金メダル、この数年の間で誰も経験したことがない舞台に立ち、子どもたちのみならず多くの人々にその背中を見せつけてきた平野歩夢。今、彼の目にはどのような未来が映っているのだろうか。

写真提供=UNIQLO

当日のイベントの様子をまとめたムービーはこちら


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