HM9S作者 Jcドゥヴニ&PMGLインタビュー 第3回

バンドデシネの絵

——PMさんはどのように絵をイメージされるのでしょうか?

PM 僕はほとんどの場合、直線型に仕事をしています。多くの読者と違って、原作を読みながらビジュアルに置き換えるということをしないんです。主に空気を受け取っている感じというか、想像力を使ってその空気を展開させて、絵にしていくんです。

——原作から放たれる空気を絵に具現化する。

PM このシリーズでは、話をコマに落とし込んでいくのはJcがしていて、彼が作ったページ構成と脚本をベースに、僕が縮小版でラフスケッチを作っていくんですが、読んだときのダイナミズムや目がページを辿る道筋を絵にするために、最もシンプルで直線的な形のみで描きます。

ラフがうまくいって、Jcからゴーサインをもらったら、拡大して、できるだけ自然発生的に、ディテールを描いていく。服装やランドスケープ、背景やものなどは僕がディテールを考えて描いています。もしミスしても、いいと思えば残すようにしています。たとえば、あるコマで女性の指の関節が多かったとしてもよければそのままにする。その後、着彩していくんですが、ここでは集中力はあまり必要としないけど、時間がかかる。まずは写真的なディテールを使って、そこからコンピュータで色値、密度、明暗、色を変えていきます。

*こちらがPMGLのキャラクターデザインのラフスケッチ。
HM9S PMGLのキャラクターデザインのラフスケッチ

PMGLのキャラクターデザインのラフスケッチ
 
 
——「パン屋再襲撃」では途中、絵の中に鹿が出てきましたが、あれは短篇にはなく、バンドデシネオリジナルですね。鹿のアイデアはどこから?

Jc 鹿は僕が提案しました。10代の頃、ワグナーのタンホイザーの冒頭を聴いた時に、森と優美な鹿がぱっと思い浮かんだのを思い出して。たぶん19世紀のドイツロマン主義のスタイルで描かれたアルバムのジャケットの絵に影響されたのだと思う。『パン屋再襲撃』の翻案を始めた時、その絵が突然浮かんできたんです。純粋な個人的なことを超えて、頭蓋骨と空の間をつなぐかのような、雄鹿の複雑に入り組んだ枝角は、若い夫婦がかかっている呪いの面白いメタファーになるだろうと思ったんです。

PM 枝角が語り手の背景を侵略しているかのようだし、成長している木の根っこみたいにも見える。登場人物がかかっている呪いに対する気持ちを強く表現しています。

——漫画家になる上で影響を受けたバンドデシネの作家、日本の漫画家はいますか。

PM 何度も読み返したのは鳥山明です。あと大友克洋は、8歳の時のバス旅行でクラスメートが教えてくれて、それ以来のファン。その二人は僕の世代のフランス人にはとても大きな影響を与えたと思う。ほかに、桂正和、士郎正宗、坂口尚も読んだし、フランス=ベルギー系バンドデシネの作家でいうと、エルジェ、ペヨ、ユデルゾ、モーリス、ゴシニ、フランカン、ゴットリーブ、アメリカの作家だとビル・ワターソンとマイク・ミニョーラかな。

——フランスと日本、両方のアーティストからの影響を強く受けているのですね。

PM ごめん、挙げるときりがないんだけど(笑)。ほかにはデイブ・マッキーン、バッタリア、ブルジョン、トッピ、ブレッチャ、カルロス・ナイン、フランソワ・エロール、松本大洋、エマニュエル・ラルスネ、ド・クレシー、アシュリー・ウッド、マトッティ、フェルスター、F’murr、ムニョス&サンパイヨ、ターク&デ・グルート、トロンハイム、ミコル、フレデリック・ペータース、タルディ、ブルッチ、ロビン西、高野文子。今読んでいるのは、花沢健吾と浅野いにおです。

——10月発売の2巻目も楽しみにしていますね!ありがとうございました!