【CREATION SWITCH Vol.1 第6回】久米繊維がTシャツを作り続ける理由 「すみだストリートジャズフェスティバル」に見るTシャツの輪

墨田区の夏の風物詩の1つ「すみだストリートジャズフェスティバル」。今年で第9回となる本イベントが8月18日(土)と8月19日(日)の2日間にわたり開催されました。墨田区の企業やボランティアの皆さんで運営される「すみジャズ」に久米繊維は第1回より参加し、イベントの公式Tシャツ作成のお手伝いをしています。毎年異なるアーティスト/クリエイターを起用して発表される「すみだストリートジャズフェスティバルTシャツ」。製作エピソードを紐解いていくと、久米繊維という会社がなぜTシャツを作り続けるのか、その理由が少しずつ見えてきます。

インタビューを受けてくださったのはこれまで「すみだストリートジャズフェスティバルTシャツ」をはじめ、「3.11復興支援プロジェクトTシャツ」などのTシャツを手がけてきた竹内裕さん。竹内さんの優しい語り口には、久米繊維への愛情が詰まっていました。

——「すみだストリートジャズフェスティバル」への参加はどのようなきっかけだったのでしょうか?

竹内「墨田区で会社経営をされている若い社長さんがこの街への恩返しということでこのイベントのお話をしにご来社されました。錦糸町は“すみだトリフォニーホール”があり音楽の街とも謳っているので、地方のジャズフェスを参考にして音楽イベントをやりたいとの事でした。最も素敵だなあと感じたのは、全ての皆さんが無料で音楽を楽しめるイベントにしたいという粋なはからいです。是非、お手伝いをさせて頂きたいと思いました」

竹内裕さん 着用Tシャツ(第9回すみだジャズTシャツ 西山寛紀デザイン)

竹内「イベントを実現するためには運営資金が必要になります。そこでTシャツを販売することで運営資金を捻出することになりました。大切なお金です。それにみなさんの想い出や記念になるTシャツを創らなければなりませんので、重要な役割を担う事になります。永く愛用できるTシャツでなければなりませんから。今では毎年6月頃になると過去の”すみジャズTシャツ”を着て歩いている方をよくお見かけします。今年もすみジャズは期待されているんだなあと俄然ファイトが沸いてきますね」

——これまでのアーティストにはどういった方がいらっしゃるのでしょうか?

竹内「例えば、第5回の時は安斎肇さん。もともと個人的に私がファンだということもありました。1994年から始まったJALの『リゾッチャ』というハワイやグアムのリゾート路線のキャンペーンがあり、そのキャラクターを安斎さんが手がけていました。当時私はよくリゾートダイビングに行き飛行機に乗る機会があり、そこで安斎さんのイラストレーションと出会って一目惚れしたんです。『憧れの安斎さんといつか仕事がしたい』とずっと思っていました。その時が来た! と思いご連絡させていただきました。

すみジャズの話を緊張しながら頑張って伝えたら、『やりましょう』と引き受けてくださいました。数日経って絵コンテをデータで送って頂きましたら、なんと複数のデザインを描いてくださいました。私達、すみジャズTシャツ委員会はもう感動して、全部作っちゃいたいところでしたが、その中から1つ、選んでできた作品がこちらです」

「第5回すみだジャズTシャツ(安斎肇デザイン)」

竹内「墨田区のいいところが全部凝縮されたようなデザインです。すみジャズの主役はプレイヤーとオーディエンス、そしてボランティアとして支えて下さっている皆さんです。Tシャツはあくまでも脇役。すみジャズの想い出としてTシャツがあり、デザインの面白さなどを感じていただきこれまでに多くのみなさんからご支援をいただいております」

——今年の『すみだジャズTシャツ』をデザインしたアーティスト西山寛紀さんについて教えてください。

竹内「西山さんは”東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)”という組合所属のアーティストさんですが、去年に東京の東をテーマに絵を描いた展示会を開催しました。その時に久米繊維でTシャツ作成のお手伝いをさせて頂いたのがきっかけです。西山さんは”ひとの心”というものをテーマに作品を作り続けていらっしゃるアーティストで、今回のものは過去8回のTシャツに比べてタイトルを大きく打ち出したデザインになっています。”すみだストリートジャズフェスティバル”をタイポグラフィで表現されています。性別や年齢に左右されない王道のデザイン、そして人と人との繋がりが溶け込んだデザインであると感じています」

——このTシャツを着ることで一体感を感じられ、同時に人にメッセージを発信できる。美しいデザインだと思います。

竹内「TISの展示会の時に私達久米繊維がTシャツを作った時の過程を漫画にしてくださいました。よろしければご覧下さい。これが弊社の会長! 結構特徴を捉えていますね(笑)」

久米会長の似顔絵

——これは誰ですか?

竹内「これは私です。似てますかねえ(笑)」

——(笑)

竹内「おかげさまですみジャズは2日間の開催でのべ10万人を動員するビッグイベントにまでなりました。一人の情熱がみんなを巻き込んで、それぞれの得意分野できちんと力を発揮して、夢を実現させていく。これって実はものづくりの精神と近いものがあると思っています。夢は言っていかないと叶わないし、チャレンジしてみないとつまらないでしょう。

多くのミュージシャンが、この墨田で演奏をしたい! とか多くのクリエイターやアーティストが公式Tシャツのデザインを手掛けたい! と思えるフェスへと成長できるお手伝いをこれからもして行きたいと思います。みんなで一つのものを作り上げるということ。久米社長に教わった、チームでやらないと意味がないという言葉に通じる理念です。

弊社の現会長が言っていますが、近江商人の三方良しの考え方があります。作り手、売り手、買い手が満足できれば、世間が良くなる。一方が儲けすぎたり良い思いをし過ぎても駄目だと。だからすみジャズのTシャツは地元への社会貢献活動として捉えております。みなさんが喜んでいただけることと、地元に貢献するということ。その考えに即して商売をやっていく。これが大切です」

——久米繊維のTシャツが愛される理由が垣間見えた気がします。

竹内「墨田区っておもしろいですよ。東京スカイツリーができたことによって世界の観光都市の仲間入りをしました。だから各会社が『どんなおもてなしができるだろう』って必死に考えて切磋琢磨し合う。弊社のホームページにある『メリヤスくんとメリーちゃん』というTシャツのスナップショットの連載も、墨田区の飲食店や色んな施設で撮影することで、そこを紹介できるのでお店等にもメリットが生まれます。一緒に発展していきましょうという思想が久米繊維の商売です。

だから、ものをつくることだけじゃなく、他業種との繋がりもまた、ものづくりの川ですね。みんなが繋がっていないと良いものが作れないし、良い商売ができない。

私は58歳ですけれど、働いていて楽しいです。たかだが58年生きてきたって、知らないことだらけです。NPOやNGOの方とお仕事する機会が多いので、彼らが世界で見てきたものを教えていただいてます。それを自分なりに噛み砕いて、久米繊維で情報発信をします。するとTシャツ屋さんなのに、こんなことも教えてくれるんだって、反応が返ってくるんですね。久米繊維としては私たちが面白いと思ったことや、学んだことを皆さんに伝えることで、その人たちに何か少しでも得るものがあればいいなあという思いがあります」

——Tシャツを作り続けることが人と人を繋いでいく。

竹内「以前、企業に勤務しているお子様向けにTシャツワークショップを開催したことがあります。パパ、ママが一生懸命に働いている姿を”事業参観”というかたちで子どもたちに見てもらい、何かを感じてもらおうという企画です。毎日ごはんが食べられたり、学校でお勉強やお友達と遊べるのもパパ、ママが頑張っているお陰だと言うことを知ってもらって、家族の絆をより深めていただければとの想いがありました。

そこでパパ、ママへのお礼に子どもたちがTシャツに手描きで絵やメッセージをお絵かき感覚で描いていきます。後日、あるエピソードがあり、それはトラックの運転手をされているお父さんが、得意先で『なんだ? そのTシャツ』っていわれたら『実はうちの息子がね……』と嬉しそうに説明したそうなんですよ。このことの何がいいかって、家族を守る為に安全運転するようになるんですね。企業にもプラスに働く。息子が自分のために作ったTシャツをただ着ているだけで、いつもより気をつけようという意識が強まるのです。そして、子どもも自分が作ったTシャツを着てもらえるだけで、親の愛情を感じるのです。僕はその話を聞いて、『ああ。Tシャツは人の心も動かすんだな』と確信しました。こじつけかもしれないけれど、Tシャツがきっかけでそういう物語が生まれるのは素敵なことだなと思います。Tシャツ作りって、幸せな仕事だなって」

<目次>
第1回 最初で最後の国産Tシャツ、はじまりの下町へ(10月22日公開)

第2回 究極のTシャツ――色丸首を語る(前編)(10月22日公開)

第3回 究極のTシャツ――色丸首を語る(後編)(10月23日公開)

第4回 表現者を”着る”ということ――「北斎プロジェクト」(10月24日公開)

第5回 Tシャツを着て飲む酒は「ヤレタノシ ヤレウマシ」 ――日本酒Tシャツ『蔵印』(10月25日公開)

第6回 久米繊維がTシャツを作り続ける理由(10月26日公開)

第7回 ファクトリーショップへようこそ!(10月29日公開)