本屋のかお Pebbles Books(東京・小石川)

本棚と書店員。二つの「本屋のかお」を通して、これからの街の本屋を考える—— 。川を流れ磨かれた美しい小石のような、良い本を集めたい。そんな思いを込めて“小石”を意味する“Pebbles”と名付けられた小さな本屋を訪ねた

本屋のかお Pebbles Books(東京・小石川)
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PHOTOGRAPHY & TEXT: TSUCHIYA MIZUKI

かつて夏目漱石や樋口一葉など多くの文士が住んだ文京区小石川。そんな文学に所縁のある街を歩いてみると、小さな印刷所や出版社が点在し、紙の文化に親しみのある土地だとわかる。2018年9月、この街に本屋ができた。普通の住居と見紛いそうな、住宅地にある白い小さな一戸建。店内に入るとまだ新しい木材の香りと、店長の久禮さんが迎えてくれた。

—— 小石川で本屋を始めることになった経緯を教えてください。

「僕はフリーランスとしてブックカフェの選書をしているのですが、そのご縁でお世話になっている製本会社の社長さんが『従業員の食堂として使っていた場所が空いているので、自由に面白いことに使ってほしい』と言ってくれました。偶然その場所が、以前僕が店長を務めていた本屋のあった、馴染みの小石川だったんです」

—— 古巣の小石川に戻って来られた。再び街に本屋さんができて、地元のお客さんにも喜ばれています。

「皆さんそう言ってくださるし、小石川は大好きな街なので嬉しいです。でもこの場所に強いこだわりがあって戻って来た、という熱いストーリーではなくて(笑)、色々な幸運が重なってたまたまここに新しくお店ができただけ。前のお店とは売り場面積も運営方法も全く違う、別のものです」

—— 内装からご自分で手がけたそうですね。

「壁も床も棚も、ゼロから手作りで空間を作っていきました。会社が経営する本屋で働いていた時にはなかった経験だったのでとても面白かった。新しい書店を立ち上げる時は、コストを考えて既存の規格のスチール什器を使うことが多いのですが、本の見せ方として僕はそれでは物足りないと感じていました。食べ物を良い器に盛り付けると美味しく見えるように、本も良い棚に並べたら読みたくなる。デザインが先行しすぎるような内装も気が引けますが、自分なりに良い加減でやってみました」

—— どうやって選書をされていますか。

「ジャンルは広く扱っていますが、開店して間もないこともあり、今は読者として自分が好きな本や、自分がイメージするお客さんに合わせた本を仕入れています。ただ、想定は外れることも多いので、実際にいらしたお客さんやその反応を見ながら徐々に軌道修正していきます。その作業がまた楽しい。自分の方に引き寄せたり、お客さんに寄っていったり、綱引きのような感じ」

—— どんなお店になっていくか楽しみですね。

「歴史と趣のある街の文学的な部分を気に入っている地元の方も多くて、郷土愛みたいなものが根付いている土地。文化的で質の高いものが求められている一方で、砕けた庶民的なものも楽しんで受け入れてもらえる場所なので、凝った品揃えや珍しい本にも挑戦しながら、街の本屋としてきちんと応えていきたいです」

<プロフィール>
久禮亮太(くれりょうた)

高知県出身。あゆみBOOKS小石川店の店長を経て2015年に「久禮書店」の屋号でフリーランスとして独立。カフェ・神樂坂モノガタリの書籍部門担当、長崎書店の実務コンサルタントなどの活動をしながらPebbles Booksの運営も始めた

【今月の棚】

本屋のかお Pebbles Books(東京・小石川)

ジャンルを横断して一見関係なさそうなものが繋がっていくのが本屋の面白いところ。「脳科学から実存を考える」といったサイエンスと哲学の両面性を持つような内容の話が好きで、この規模のセレクト書店にしてはそういった人文書が多いかもしれないです

【語りたい3冊】

①『クワイエット・コーナー 心を静める音楽集』監修=山本勇樹(シンコーミュージック)静かだけどしっかり主張もある音楽が選ばれた秀逸な音楽集 

②『流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則』著=エイドリアン・ベジャン、J.ペダー・ゼイン(紀伊國屋書店)自然現象から情報まで“流れ”をテーマに様々な事象の類似性を発見できる一冊

③『ペルーの異端審問』著=フェルナンド・イワサキ(新評論)歴史上本当にあった話を元に、聖職者の情事を描いた短篇小説集。不謹慎だけどくすりと笑ってしまう

<店舗情報>
Pebbles Books
東京都文京区小石川3-26-12
営業時間 13:00-22:00 日10:00-19:00 火・水定休

(本稿は2019年1月20日発売『SWITCH Vol.37 No.2』に掲載されたものです)