Foxfire True to nature Vol.5 知来要

自然に挑むのではなく、自然と共に生き、
自然に対して真摯であること。
表現者は自然の声に耳を傾け、生きる知恵を学ぶ。
独自の視点で淡水魚の世界を写真に収めてきた
写真家の知来ちらいようとともに、日光へ釣りに出かけた。

Foxfire True to nature  Vol.5 知来要

Photograph by Futagami Shinnosuke

知来要 56年埼玉県幸手市生まれ。サンケイスポーツ新聞社、ベースボールマガジン社を経て2013年にフリーカメラマンとして独立。田淵行雄賞受賞。

日光はヒメマス、ニジマス、ホンマス、レイクトラウト、ブラウントラウトといった様々な鱒が生息し、日本のフライフィッシング発祥の地として多くの釣り人を魅了しています。魚を撮りに毎年全国に足を運ぶのですが、一カ所でこれだけたくさんの種類の鱒を見られる場所は他にないので、二十代の頃から日光に通っては季節ごとに魚の姿を写真に収めてきました。

魚を撮り始めた頃にまず狙ったのはヤマメのライズでした。跳び上がって虫を捕食する瞬間というのは当時写真では見たことがなく、それこそ漫画の『釣りキチ三平』でしか見たことがない魚の姿でした。その瞬間を写真に収めようと、いつライズするかわからない魚を待って、5年がかりでようやく最初の一枚を撮ることができました。今では魚の生態から行動を予測して、水面にセンサーを仕掛けて割と楽に撮れるのですが、そういった撮影のための道具も自分で試行錯誤しながら作っていましたね。振り返ると見当違いな努力もたくさんあったのですが、“真面目に”無駄を積み重ねてきたことが今の自分に繋がっていると思います。

僕はもともと新聞社のスポーツカメラマンとして写真のキャリアをスタートし、長年プロ野球や大相撲などの撮影をしていました。だからフリーになるまでは、東京ドームでの撮影を終えたその足で日光に向かい、翌朝から魚を撮るという生活を続けていました。

淡水は海と比べると表現の幅が広くておもしろい。例えば淡水では魚が棲む周囲の森や季節の変化が写真に写り込みます。水と空気、そして光といった自然の美を構成する要素を捉えて、その中を悠々と泳ぐ魚を写真に収めてきました。魚って実はいろんな表情をするし個体ごとに模様も違っていて、とても魅力的な被写体だと思います。

Foxfire True to nature  Vol.5 知来要

Photograph by Thirai Yo

やがて魚と同じ目線で水中を撮るというスタイルに行き着くと、見える世界も変わってきました。我々人間と同じように魚の視界にも森や空が映り、同じ景色を見ていることに気づくと、水中という別の世界に生きる動物ではなく、人間と同じ環境に生きる仲間だと思えてきます。すると彼らが生息する川は汚れていないだろうか、流れは途絶えていないだろうかという環境への意識も自然と芽生えてくる。水中撮影に限らず、釣りを通して学べることもとても多い。だから釣りをしたことがない人、特に子どもには自然の中で魚と触れ合って欲しいですね。

僕にとって釣りは、自分と向き合うための貴重な時間でもあります。5万人もの大歓声に包まれるドームでの仕事とは対照的に、ひとり自然の静寂の中で魚と対峙していると、落ち着いて気持ちの整理ができ、また新鮮な気持ちで次の仕事に臨めます。

僕がこの日光に長年通っているのは、ここに暮らす人たちの存在も大きいです。どんなに自然を相手にしていても、その土地との関係を繋ぎとめるのは人です。森や川が健全な場所というのはそこに暮らす人々もまた健全であり、その逆もまた然りだと思う。そう考えると、やはり人も自然の一員なんでしょうね。

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