COMME des GARÇONS HOMME PLUS FW2022-2023「独立独歩、現代を自由に彷徨う孤高のノマド」

1月17日、南青山のCOMME des GARÇONS本社で2022-2023年秋冬のショーが開催された。今回のコレクションのテーマは「nomad(ノマド)」。英語で「遊牧民」や「放浪者」を指す言葉だ。

今回のショーに向けて、川久保玲はこのような言葉を残している。

「今 知りたいと思えば情報はいくらでも手に入る
Internetにより何処へでも 行くことができる 経験した事になる
しかしそれでも私は満足できない

属さない 群れない
真に自由に自分自身で生きるノマドに憧れる 羨ましい」

COMME des GARÇONS HOMME PLUS FW2022-2023「独立独歩、現代を自由に彷徨う孤高のノマド」1

最初に目を引くのは渦巻のペイントが施された背高のハット。今回のショーでは一貫してのすべてのモデルが長髪にハットのスタイルで登場した。縮絨のニットのセットアップはフォーマルすぎず、どこか肩の力の抜けた印象を与える。クラシックなハットと柔らかくたるみのあるセットアップのバランスが絶妙だ。

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ツイードのノーカラーのコートの下には大胆に胸元が開いたブラウスが覗く。ツイードと薄手のブラウス、コートの下に垂れるフェルト生地の質感の違いが心地よいリズムを生んでいる。

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ショーが中盤に差し掛かると、あることに気が付く。濡れた髪の水滴が、ウール地のコートの上をコロコロと滑り落ちていく。ガラス玉のようにきらきらと光る水滴は、雨が降りしきる街中を、傘をささずに颯爽と歩くロンドナーを思い起こさせた。

COMME des GARÇONS HOMME PLUS FW2022-2023「独立独歩、現代を自由に彷徨う孤高のノマド」4

今回のコレクションのなかで最も印象深かったのはこちらのルック。穴の開いたハット、コートからはだけた胸元、そして髪からコートに滴る水滴。ポップなカラーリングのフェルトのワンピースは、ボディラインにはあえて添わせず、布の個性を尊重した美しいラインを描いていた。流行に惑わされず、自らの価値観に重きを置き独立独歩に前に歩きつづけるノマドの肖像をそこにみた。