北村道子×池松壮亮 ファッションと身体論 SWITCH Vol.34 No.7

LESSON ファッションと身体論
TEACHER 北村道子 STUDENT 池松壮亮



『それから』、『殺し屋1』、『メゾン・ド・ヒミコ』など、数々の映画衣裳をはじめ、雑誌・広告・MVなど様々な領域で衣裳デザイン・スタイリングを手掛けてきた北村道子。その北村が、現在25歳、若手実力派としてオファーが絶えない俳優、池松壮亮に実践スタイルでファッションと身体についてのレクチャーを行った


PART2
身体と服のいい歌い方
何もかもをゼロにする

北村
でも、今日はヘアのTAKUさんにお願いして、髪の毛を上げてもらって額を出してもらったから、美しいですね。『ラストサムライ』の時をちょっと彷彿とさせて。
池松
新宿でお会いした時もそのことは言われました。「あなた、額を上げなさい」って。それはすごく覚えています。
北村
額を出すのは何かを表現する時にいいんですよ。何かに対して自分がメッセージを伝えようとする時。たぶん今日撮影した写真を見ると、「ちょっと俺いいかも」って言うと思うよ。人前に出て表現するということはビジネスも兼ねている。その時に額が隠れていると伝わらないのではないかしら。映画俳優として映画の記者会見でメッセージを言う時には額を出したほうがいいと思う。

“話す”ことというのは、矢を“放つ”ことと同じ。“放つ”、つまりリリースすることは、胸の中にある感情を伝えるという作業なんです。そしてしっかりとターゲットに当てること。そうじゃない時はどんな髪型をしていたっていいんです。ゼロの状態だから。でも何か対象に対して発する時は、額を開けたほうがいいと思う。何かに対してメッセージを発する、それ自体が音楽じゃないですか。歌を歌うっていうことが大事で、台詞を言う時も、歌を歌っているように台詞が出てこないと絶対に駄目ですよ。
池松
それはすごくわかります。僕のテーマでもあります。
北村道子 池松壮亮

北村
それは洋服についても言えることなんです。今日、コム・デ・ギャルソンを着てカメラの前に立った時、とてもいい佇まいだった。たぶんこういう服をあまり着たことがないでしょう?
池松
ないです。
北村
初体験じゃない。だけど、ふっと身体が洋服を迎え入れて、いい歌い方をしていた。実際に歌っていなくても、身体が歌っている。だから撮影中、私はタッチする必要がなかったんです。服を直さなくてもよかった。それは着せた時にすごくわかるんです。私はメンズのスタイリングをする時には、何もかもゼロにしちゃうんです。うるさいものは全部どこかに行ってもらいたいの。髪も上げて、全部剥き出しなんです。そうすると自然と手の持って行き方も静かになるしかない。一番うるさいのは手なんだから。私がそれを学んだのは小津さんの映画なんです。原節子の手の表情。所作が静かで美しいでしょう?
池松
北村さんが仰っていることと繋がるかわからないんですけど、僕がすごくいい俳優だと思っている人たちは、黙っていても詩があるような人なんです。どんな俳優になるべきかと考えて、僕が行き着いたのはそこです。歌うようにと仰っていましたけど、歌うように言葉が出てきて、詩がある。そういう俳優になれたらと思っているんです。

※ 掲載内容は 本誌 からの抜粋です

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SWITCH Vol.34 No.7
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