PHOTOGRAPHY & TEXT: MIURA TOMOKAZU
欅のもとで
欅は水を好むから井戸を掘るならこの近くが良いよ、と地元の方の助言があった。まさにその通りでもう30年近く枯れることなく猛暑の夏でも冷たい山の恵みをありがたく頂いている。
この大きな欅に覆われ守られているかのように、陶芸のための窯小屋がある。窯炊きには主に赤松の木が使われる。造成工事で伐採された赤松を地元の建築屋さんが運んでくださって、そこからは自分たちでその丸太をブツ切りにして薪割の作業に入っていく。
赤松が好まれるのは、炎が長いことと、灰が飛んで溶けると趣のある釉薬になるから。三日三晩の窯炊きでは、大量の薪を使う。火入れの際には焚口にお酒などを捧げて手を合わせ、同時に事故などが起きないように祈る。
友人と2人で始めた陶芸も、窯炊きには何人かの手伝いが必要になる。趣味の延長から始まった陶芸が、地元の方々や、友達の友達など思わぬ交友関係の広がりをみせてくれている。
この薪窯小屋の周りは360度深い緑に囲まれている。近くには小川が流れ、初めて来た友人が「ここには良い気が流れている感じがする」と言った。ここに来る人たちの誰とでもすぐに打ち解けられるのは、そうかそういうことかと合点がいった。
MIURA TOMOKAZU
1952年生まれ、山梨県出身。1971年にTVドラマで俳優デビュー。主な出演作に『伊豆の踊子』(1974)、『潮騒』(1975)、『風立ちぬ』(1976)など。脚本から携わった『M/OTHER』(1999)は、カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。映画『PERFECT DAYS』では、小料理屋のママの元夫・友山役を演じた
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