
PHOTOGRAPHY & TEXT: ASO YUMI

あの頃の記憶
意識し始めたのは、7歳ごろかな。子供なりに何かしら悩みがあったり、一人になりたかったりして、時間を見つけては木の下に寝転んで、ひんやりした土の感触と風の音を聞くのが好きだった。山がすぐ近くにあり、学校や祖父母の家の帰り道に立ち寄る、ほんの少しのリラックスタイム。心が落ち着き、なんとなく整理された気がした。
森の中の木陰は夏でも涼しく、見上げる木漏れ日が大好きだった。私はこれでいいのだろうか? 将来どうやって生きて行くんだろう? なぜうまくいかないんだろう? とか色々。なんだか答えが出ぬまま見上げていると、時々、風が吹いて葉っぱが揺れる音が、まるで木が返事をしてくれているように感じた。木の下にいると、一人でもさみしくなかったし、不思議と安心できて、また明日も何とかなるかな、と思える場所だった。
大人になり、今は森の近くに住んではいないけれど、新しい存在が近くの神社にいて、その大きな先輩の木に時々会いに行く。行くと必ず、触れてしまう。ありがとう、よろしくね、って。
ASO YUMI
1963年生まれ、長崎県出身。1986年デビュー。以降、数多くのテレビドラマや映画などで活躍を続ける。近年の主な出演作に『港に灯がともる』『火喰鳥を、喰う』(10月3日公開)がある。『PERFECT DAYS』では、主人公の平山と離れて暮らす妹のケイコを演じている
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