PHOTOGRAPHY & TEXT: YAKUSHO KOJI

ボクの友だち

 映画『PERFECT DAYS』の脚本の打ち合わせで、ヴィム・ヴェンダース監督の口から「ともだちの木」という言葉が出て、脚本の高崎氏がそれを脚本に反映させたと聞いています。その話を高崎氏から聞いた時、僕はすぐこの「ミヤマザクラ」のことを思い出しました。彼との出会いは37年前です。

 昔読んだ、探偵小説の中で探偵と少年がログハウスを建てるシーンがあり、とても印象的でした。以来ずっとログハウスの山小屋に住むということが夢でした。ある日、知人の紹介で八ヶ岳の麓にある土地を見に行きました。そこは別荘地でもなくカラマツと赤松の荒れた林の中にありました。僕のともだちの木は、その松たちに囲まれて窮屈そうに立っていました。でも隙間を狙って日に当たれるところを目指して枝を広げて頑張って生きていました。その土地を手に入れログハウスを作りました、残念ながら自分で建てた訳ではありませんが……。

 ともだちの木の彼は、日当たりも悪く、窮屈な場所でも素晴らしい花を咲かせ、花が散ると赤い実を付ける美しい樹でした。申し訳ないが彼の周りの松たちを伐採し彼に太陽の光が存分に当たるようにしました。伐採した松たちは薪小屋の建材になり、彼を側で見守っています。彼はみるみるうちに立派なミヤマザクラに成長しました。今はもう最盛期を過ぎ、歳をとってきましたが、5月の後半には美しい花を咲かせてくれます。彼がいつどんな風にここに来て、どんな風に育ってきたのか? 時々聞いてみますが答えてはくれません。最近、歳をとってきた彼に「周りの環境を変えた俺のことをどう思ってんのよ?」と聞きますが無視です。多分、僕の方が先に逝ってしまうと思いますが、もし彼が先に逝ったら、彼を使って椅子を作り、彼の居た場所に座って、残った部分をチップにして作った燻製をつまみに、酒を飲みたいと思っています。


YAKUSHO KOJI
1956年生まれ、長崎県出身。近年の出演作に映画『銀河鉄道の父』、『八犬伝』、『雪の花 −− ともに在りて−− 』、待機作にNetflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』がある。映画『PERFECT DAYS』ではトイレ清掃員・平山を演じ、第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した

 

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