
PHOTOGRAPHY & TEXT: IGA DAISUKE

ご無沙汰です先輩
この写真一枚で気づく人もいるかもしれない。これ『PERFECT DAYS』に出てた木じゃねえか! と。ええ、そのまんまなんです。代々木八幡宮の階段を上がった所、役所広司さん演じる平山さんがOLさんと並んでパクッとサンドイッチを食べる、あそこの木々です。この原稿を書くにあたって、これは流石に身近過ぎ? という逡巡も一寸はあったが、ホントにそうなんだから仕方がない。
1977年、僕が産まれたのはこの代々木八幡から(頬を刺す)山手通りをグーッと下がった西新宿5丁目あたりで、小学生の時はビーバースカウト〜カブスカウト(要するにちっこいボーイスカウト)をやっていて、その渋谷9団の活動場所はこの代々木八幡宮の木々の真下だったのだ!! ここの境内にある縄文時代の住居遺跡の横でローブ結んだり、テントの張り方練習したり、平山さんと同じようにお弁当を食べたり……。8歳か9歳の大晦日には、初詣に来る人のために焚き続けるたいまつの火の番を仲間と夜通しやったりもした(人生初徹夜。寝たけど)。その後『キャプテン翼』の影響をモロに喰らってサッカーに流れたので、八幡とはしばしのお別れ。だかしかし、木々はとにかくずっとそこにあった。
少年は青年になり、壮年になった。フラッと寄ったり、撮影で来たり、息子の七五三をやったりとその後も緩い付き合いは続いた。そして前述の『PERFECT DAYS』である。
まさかあの時のカブスカウトのガキが、敬愛する監督と俳優と共に、ここに帰ってくるとは夢にも思わなかった。木々は何にも言わず、昔と同じようにそこにあった。ただそれだけが嬉しかった。「ともだち」というよりは「先輩」みたいな木々である。また会いに行こう。
IGA DAISUKE
1977年東京生まれ。映画『PERFECT DAYS』のスタイリストを務める。役所広司演じる主人公平山の世界を作るために「平山は右利きか、左利きか、フィルムカメラはどのポケットに入れているのか」などと、監督ヴィム・ヴェンダースと何度もセッションを重ねた
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