SWITCH PUBLISHING


SWITCH原宿百景

─ もうひとつの原宿のBGM ─

増田セバスチャン

1970年生まれ。演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年にショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。2011年きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」、MV美術で世界的に注目され、2015年夏にはコンセプト・美術・演出をプロデュースした都内最大級面積のカフェ「KAWAII MONSTER CAFE」が原宿にオープン。2014年からニューヨークを拠点にアーティストとして活動を開始。現在2020年に向けたアート・プロジェクト「TIME AFTER TIME CAPSULE」を展開中。

このプレイリストは、雑誌「SWITCH」2016年4月号(3/20発売)「特集・小泉今日子 原宿プレイバック」内企画、「原宿百曲 HARAJUKU BGM 100 SONGS」からのスピンオフ企画として、「原宿百景」には登場していないが、原宿に縁のある5名が原宿のBGMを10曲ずつセレクトしたものです。「原宿百曲」に登場のセレクター10名の選曲に関するコメントはSWITCH 4月号特集「原宿プレイバック」に掲載しております。

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「高校生のぼくは、週末、竹下通りで野宿していた」

  ぼくが初めて原宿に来たのは、中学生のときです。よーく憶えています。千葉県松戸の中学生だったんですが、当時のホコ天は、竹の子族、ローラー族の時代でした。流れていたのは、ロカビリーと、「♪ジン、ジン、ジンギスカン〜」のディスコソング。でも、ぼくを一番直撃したのは、そのちょっと後の「イカ天」でした。ホコ天でわき起こったバンド・ブームです。ぼくが高校生になった頃、「いかすバンド天国」というテレビ番組が大人気で、ぼくは毎週、テレビに出ているバンドを観るために原宿へ行く、という感じでした。

 高校生の頃のぼくは、週末になると一泊二日で原宿に来ていました。土曜日、学校が終わってから原宿へ出てくるわけですが、まずは渋谷に行きます。センター街で終夜営業していた某喫茶店は当時、コーヒー1杯たのむと「トースト食べ放題」だったんです。そういうところでしばらくねばって、夜がふけて、人がいなくなって静かな竹下通りへ移動しました。昔、竹下通りのショップって、半地下の店がたくさんあったんですね。今は少なくなってしまったようなんですが、あの頃、路面から少し階段を降りたところにもお店があるという構造でした。ちょっとニューヨークのイースト・ヴィレッジとか、そういう感じの雰囲気。で、その階段をちょっと降りた半地下のところ(屋根もある)で野宿するわけです。おまわりさんが通っても怒られることはなかったですね。なんか、ユルい時代だったんだろうなぁと思います。で、野宿して、朝起きたらホコ天に直行して、バンドをずっと観ている、みたいな感じでした(笑)。

 とにかくインディーズ・バンドが大好きな高校生でした。渋谷の「屋根裏」というライブハウスでいろんなインディーズの音楽と出会ったし、宇田川町にはレコード・ショップがいっぱいあった。知り合ったヤツと、一緒に竹下通りへ行くわけですよ。
 その頃ぼくが熱心に聴いていたのは、パンクやハードコア、どれもインディーズばっかりです。若い時代ならではのあり余るエネルギーを持てあまして、それをハードコアで発散! みたいな感じでした。「破壊」のようなスピリットが、高校生くらいの頃のぼくの中にはあったんじゃないでしょうか。実際に破壊はしませんでしたが(笑)。
 でもあの頃、「屋根裏」のようなライブハウスでは、ハードコアと並んで「ナゴム系バンド」が出てきたり、いろんなジャンルのバンドが同時に演っていたんですね。そこで「いろんな音」を知っていったのかもしれません。「あ、こんなのもあるんだ」という感じで音楽を学んでいきました。渋谷そして原宿によって、自分が好きな音楽が増えていったようにも思います。

 ぼくにとって原宿は、東京の街の中でもずっと「スペシャル」な場所です。
 原宿は、場所によって人の感じも密度も変わりますが、ぼくが高校生の頃は、その「違い」がもっとはっきりしていたと思います。当時よく言われたのは、「明治通りの向こう側(神宮前の方)に行くと、カツアゲされるよ」ということ(笑)。子供のぼくらは、ちょっとビビりながら明治通りを渡って向こう側へ行きました(もちろん、ただの噂でしたが)。当時、明治通りより向こう側はお店も少なくて、何もなかった感じでしたね。
 昔も今も、原宿でぼくが一番好きなエリアというと、観光客がものすごく増えましたが、今の「6%DOKIDOKI」があるこの辺りです(お店は今年で21年目!)。24〜25歳の頃に、ここから数十メートル離れた場所に最初の「6%DOKIDOKI」を出しました。当時は「裏原宿(ウラハラ)」というネーミングさえない時代。この辺りはただの「裏通り」で、家賃が他より安かったんです。お金のないぼくにとってお店を出すにはこの辺りしかなかった。でも今ではこの辺りが原宿のメイン・ストリームのようになっていて、時代の変化をものすごく感じますね。
 でも、変わらず原宿はぼくにとってスペシャルだし、これからもずっと大好きな街であり続けるだろうと思っています。

#1 「1・2・3・4」/ OOIOO

1990年代半ば、ぼくがハマっていた「レイブ・カルチャー」と直結していたのが、ボアダムスやOOIOOでした。今、聴いても、あの頃の空気がよみがえってきます。

#2 Brush Your Teeth / Buffalo Daughter

少年ナイフやチボ・マットと並んで、いち早く海外に出ていたバンドだと思います。日本ではインディーズの扱いだったと思いますが、90年代初めから、世界を舞台に活躍していたバンドですね。あの頃の原宿の空気感があります。

#3 The Noise Of Carpet(LP Version) / Stereolab

ステレオラブは1980年代から活動していましたが、90年代に花開いたというか、ワールドワイドにヒットしました。いわゆる「オルタナ系」ブームの始まりの頃。レディオヘッドより早くて、まさに「ポストロックの先駆者」的なバンドですよね。この辺りのサウンドが、90年代前半の原宿のいろんなお店でかかっていました。

#4 Holiday Inn / Stereo Total

ピチカート・ファイブとか、いわゆる「渋谷系」ともリンクしているステレオ・トータルは、ドイツ人によるフェイク・フレンチ・ポップというか、ガールズ・ガレージ・ロックのようなサウンド。この辺りはやはり、1990年代の原宿に大きな影響を与えていたと思いますね。

#5 好き好き大好き / 戸川純

1980年代、原宿の女の子たちに大きな影響を与えたと思います。インディーズから現れて、メジャーになっていくという流れに憧れる女の子たちも、原宿には大勢いるんじゃないでしょうか。原宿の「系譜」のひとつとして選んでみました。

#6 にちようび / JITTERIN’JIN

1990年代、ホコ天で観ていた記憶があります。このバンドも、当時の原宿に来ていた女の子たちに強い影響を与えていたはずです。

#7 Journey(Remixed by DMX Krew) / The Gentle People

他の曲とはちょっと流れが違うかもしれませんが、1990年代、小西康陽さんやFPMと並んで、ウラハラのこの辺りのショップでほんとうによくかかっていたナンバーのひとつですね。渋谷系と呼ばれるジャンルにも入るのかもしれませんが、原宿でもほんとうによく耳にしたので選びました。

#8 Overlap / Ken Ishii

「KAWAII」のイメージも強い今の原宿とはなんか結びつかないように思われるかもしれませんが、1990年代半ば頃、ぼくや仲間たちは、クラブ・カルチャーにハマッていて、いわゆるレイブ・シーンに引き込まれていました。あの頃、代々木公園でも、レイブ・パーティのような風景が毎週末ありましたよね。ケン・イシイは、そんなイメージでの選曲です。

#9 Born Slippy(Nuxx) / Underworld

1995年当時、「裏原宿ファッション」がすごく盛り上がっていました。APEやアンダーカバーがそのリーダーだったと思います。でも、ぼくを直撃していたのはアメリカ西海岸のレイブ・カルチャーでした。仲間たちとの合い言葉は「レインボー2000に行こう!」でした。アンダーワールド、石野卓球、ケン・イシイは、そういうイメージで選んでいます。アンダーワールドのこの曲なんかは、山の中のレイブでひと晩踊り続けて、夜明けとともにこの曲が流れていた……そんなイメージです。

#10 Turn Over/石野卓球

クラブ・カルチャー、そしてレイブ・カルチャーに直撃された原宿の人たちは、「クラブやレイブに着ていく服」を探していたと思います。「6%DOKIDOKI」は「レインボー2000」にもお店を出していました。ぼくの店で売っている服は、レイブで着る服でもあるんですよ。ちょっとキッズ・ファッションというか、派手な色彩、おしゃぶりをくわえて踊りに行くみたいなスタイルは、ベルリンや西海岸で実際に流行っていたファッションでもあったんです。レインボー・カラーに染まった1994年頃のベルリン「ラブ・パレード」に石野卓球も出ていたと思いますが、そういった「クラブ・カルチャー」「レイブ・カルチャー」のイメージでこの曲も選びました。

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ANOTHER SIDE OF HARAJUKU BGM
もうひとつの原宿のBGM

2016/04/14 更新

これまで「原宿百景」に登場した人たち10名が選んだ「原宿百曲」に続き、
「原宿百景」には登場していないが、原宿に縁のある5名が原宿のBGMを10曲ずつセレクト。
さまざまな世代で選曲はどう変わるのか?
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