Björk with Dentsu Lab Tokyo / SWITCH Vol.34 No.8

Björk
with Dentsu Lab Tokyo



 2015年にリリースされたアルバム『Vulnicura』以降、VRの世界に一気に舵を切ったビョークは、音楽とビジュアルの関係性、そしてテクノロジーの未来に何を夢見ているのか?
 今回のVRプロジェクト「Making of Björk Digital」をビョークと共同制作したDentsu Lab Tokyoの菅野薫とともに、このプロジェクトにおける彼女の目指す場所について話を訊いた──


INTERVIEW
PART1

──
いままで世界中の気鋭のクリエイターとコラボレーションして来られたビョークさんですが、日本に対してどのような印象をお持ちですか?
ビョーク
つい先日、娘に話していたんです。私は十七歳の頃、東京に住んでアニメーションの勉強をしたいと思っていたって。そのかわりにパンクバンドに入ってしまって、音楽活動が忙しくなったのでその夢は叶いませんでしたが、日本の作品には非常に敬意を持っていました。
私は非常に恵まれていて、日本のクリエイターの方たちとこれまでにたくさんの仕事をすることができました。荒木経惟、ジェシー・カンダ、ドカカ、武田麻衣子など、非常に長きにわたって日本との繋がりがあるんですけれど、三年前に日本科学未来館で『バイオフィリア』のパフォーマンスと日本の子どもたちを集めた教育的なプログラムを行ってからさらに深いお付き合いが始まりました。今回も、こういった形のプロジェクトをご一緒できてとても嬉しいですし、これだけ大掛かりなことをやろうとしているのに、全てがスムーズに進んでいるように実感しています。
菅野
ビョークさんとDentsu Lab Tokyoのディスカッションは約一年前から、何かコラボレーションできるといいね、というやりとりから始まりました。それからニューヨークやアイスランドの彼女のもとを訪ねたり、スカイプなどで打ち合わせを重ね、来日してからもずっと一緒にいて制作をしています。それらを通して感じたのは、日本のクリエイターに、彼女に対しての敬意というか愛みたいなものが浸透しているというころ。

ビョークさん自身が日本のクリエイターたちとこれまでも何度もコラボレーションし、好きでいてくれることを知っているというものあるでしょう。ビョークさんご自身は、日本のクリエイターの作っている物自体に対して、どういうところがお好きなのでしょうか?
ビョーク
いつも説明したいとは思っているんですが、自分でも謎なんです。こどもの頃、私は友達に“アジアンガール”というニックネームで呼ばれていました。アイスランド人は一般的に金髪で青い目なので、私の外見は珍しかった。そのあだ名は、私にとってはからかいというよりむしろ称号で、それほどアジアに対して強い共鳴を持っていたんです。
 
 十年前にマシュー・バーニーが金沢21世紀美術館で行った個展「拘束のドローイング」で音楽を手掛けるにあたって、日本の歴史などをリサーチしました。そこで特に共感したのが神道です。アイスランドでは千年前にキリスト教が上陸した際に、十字軍が到来して、あわや元来あった宗教がすべて焼かれてしまう瀬戸際になりました。そこでバイキングが「いえいえ、我々はキリスト教を信仰しています」と言って、密かに家の中だけでアイスランドの宗教を信仰し続ける、ということがありました。

ところが日本では、仏教が伝来しても、神道という宗教を切り捨てることなく、自然崇拝を辞めずに活かして残している。ヨーロッパでは、自然に繋がる宗教は魔女狩りなどで排除されてきましたから、自然との繋がりを大切にしている文化にすごく感銘を受けました。

 その一方で日本にはハイテクな一面もあって、アニメや映画、コム・デ・ギャルソンのようなファッションにもそういった二面性を感じます。アイスランドと日本は、テクノロジーも火山も大切にする、というような部分で共感するものがあるのかなと思いますね。
菅野
日本には八百万の神という、自然のもの全てには神が宿っているというアニミズム信仰があります。キリスト教も仏教も全て受け止めて、喧嘩するものではないという、神道のベースになっている考え方ですね。
ビョーク
アイスランドもそうなんです。子供の頃、溶岩が固まってできた海岸を見て、トロールや女性のトロールウーマンの言い伝えを教えられました。彼らは洞窟に住み、夜行性で、朝になったら洞窟に戻らなければいけない。もし洞窟に戻れなかったら石になってしまう。それがこの岩なんだと。ひとつひとつの石に、それぞれ違う物語があるんです。
──
エンターテイメントの世界で活動しつつ、自然とテクノロジーという相反するものを大切にしているのにはそういう背景があるのでしょうか。
ビョーク
そうですね。でも、そこに対して抵抗したこともなければ、誇張しすぎることもないようにしてきました。アイスランドらしさを維持しつつ、グローバルな視点から表現するということは強く意識しています。それはアルバムによっても違っていて、例えば『ホモジェニック』や『ヴァルニキュラ』は愛国精神が強い傾向にあると思いますが、逆に『ヴォルタ』は遊牧民的というか、世界のあらゆるいろいろな民族をそれぞれ題材に表現した作品です。

 自分の母国を大切にしすぎてがんじがらめになってしまうと、“国らしさ”がお決まりになってしまって、すごく安っぽく感じられてしまう。実際、自分が十代の頃には「アイスランド人は毛糸を着る」的なステレオタイプな考え方があり、新しいものやモダンなものを取り入れたら「悪だ」と言われたりもしました。私は古いものを大切にしながらも、新しいモダンなものを取り入れるバランスが非常に大事だと思っているんです。


※ つづきは 本誌 でお楽しみください

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